内容説明
ロンドンのパブの止まり木に、うだつのあがらない男が三人。カウンターにはグラスと並んで壷がひとつ。肉屋のジャックの遺灰である。そこにジャックの義理の息子がベンツで乗りつける。「死んだら、マーゲイトの海にまいてくれ」―亡き友の“最後の注文”を叶えるため、弔いのドライブが始まった。挫かれた夢、嫉妬に裏切り…次第に明らかになるそれぞれの過去。思い出は哀調を帯び、秘密もまたあらわになるが、男たちの結びつきはかえって強まっていく。ほろ苦い人生を陰影ゆたかに描きだす傑作長篇。ブッカー賞受賞。
著者等紹介
スウィフト,グレアム[スウィフト,グレアム][Swift,Graham]
1949年ロンドン生まれ。ケンブリッジ、ヨーク両大学卒。英語教師を経て、80年、The Sweet Shop Ownerで作家デビュー。83年、文芸誌「グランタ」によって、ジュリアン・バーンズ、イアン・マキューアン、サルマン・ラシュディらとともに「イギリス新鋭作家20傑」に選出される。同年刊行の『ウォーターランド』でガーディアン小説賞。96年、『最後の注文』でイギリス最大の文学賞であるブッカー賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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遥かなる想い
215
1996年ブッカー賞。 ひどく哀愁を帯びた友情の物語だった。 亡き友ジャックの最後の願いを叶えるために、 灰を胸に 友たちは海に向かう.. 語り手が 場所が 頻繁に変わるため、時々 わからなくなるが、過去を巡る旅は 留まることを許さない.. 徐々に明らかになる、家族の そして 友の秘密も 最後は海に流れ去っていく、時の流れだけが実感できる、そんな印象のお話だった。2017/06/24
ケイ
150
1996年 ブッカー賞受賞作 実にいい表紙。ラストオーダーとは、パブなどを閉める前に聞かれる最後の注文のこと。訳者の解説は簡潔で的確。時間は車とともに流れ、回想は立体的。一体、完璧な人生なんてあるのか。 失敗したと思ってたら最後になんとなく大団円だったり、うまくやった奴が死の間際に孤独でいるかもしれない。横暴な父は息子から憎まれ、優しい父は娘に去られる。友情も一枚岩ではなく、不満や秘密をかかえていても、心の奥で繋がりは消せない。それでも、最期の願いをきいてくれと言われたら、悪い気はしないはず。2018/03/30
KAZOO
127
「ウォーターランド」の作者の作品でかなり前から読みたいと思っていました。酒場に集まった亡き友の友人たちが、その遺志をかなえるために車に乗って旅に出ていきます。一種のロードムービーのような感じもするのですが、それぞれ4人の語りが中心となっています。4人のそれぞれの故人とかかわる物語というような感じで、前ッ体を構成する筋らしい筋はあまりないのですが、印象に残りました。2017/06/27
どんぐり
89
グレアム・スウィフトのブッカー賞受賞作(原著は1996年)、フレッド・スケペシ監督によって映画化されている(邦題「ラストオーダー 最後の注文」、2001年)。ロンドンにあるパブでジャックの遺灰の入ったつぼを前にして集まる旧友3人と養子の自動車ディーラー。「死んだら灰をマーゲイトの海にまいてくれ」、それがジャックの最後の注文だった。マーゲイトまでの道中、ジャックが妻と出会った場所や、カンタベリー大聖堂に寄ったりしながら、友人たちのジャックとの思い出とともに過去の出来事が語られていく。→2025/02/23
藤月はな(灯れ松明の火)
89
長い間、胃ガンで闘病生活を送っていたジャックが亡くなった。友人であるレイ、レニー、ヴィックは彼の遺言を叶えるためにジャックの義理の息子、ヴィンスと共に車で英国を駆けるが・・・。狭く、閉じたコミュニティだからこその縺れた人間関係とだからこそ、別れられないジレンマ、友人だとしても許せない事とあてつけ、夫婦を分かつ出来事、望んでもやり直しが効かない事実が浮かび上がってくる度に胸が締め付けられる。そして真っ直ぐすぎるレニーに目の仇にされるヴィンスが義理の父に本当に望んでいた事、エイミーが別れを告げた人物が切ない。2017/09/14