内容説明
闇の?現代史の?随所に?痕跡を残す?謎の女?V.。19世紀末、スパイ蠢くエジプト・アレクサンドリア。『ヴィーナスの誕生』強奪が企まれるフィレンツェ。大不況期のNY下水道で神父を慰めたのは?第二次世界大戦末期、包囲爆撃下のヴァレッタに現れた司祭は。あるいは秘境の暗号名か?もしや絵画の頭文字?単に地名のヴェネズエラ?ヴィクトリア?ヴェロニカ?ヴェラ?…V.とはいったい誰なのか。そもそもいったい何なのか?次々と現れる手がかりが空前の謎を編み上げてゆく―。そしてステンシルとプロフェインはマルタ島へと吸い寄せられる。すべての始まりであり、すべての終わりであるその地へと。V、それは命。謎が謎を呼び、解釈が解釈を呼ぶ。読む者すべてが語りたくなる。天才の登場と評され、百科全書的と呼ばれ、無数の解釈が幾多の論文と研究書を生み、著者をポストモダン文学の旗頭に押し上げた衝撃のデビュー作。怪物の登場を刻む、記念碑的傑作。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
117
前半のクレイジーでシュールな面白さから一転し、下巻の最初はこれでもかという残酷さ。しかしどこか異世界なような感覚に既視感を覚えこれはスローターハウス5で感じたものだと気付く。おもえばV.と比べると、あちらは随分と読みやすかったものだ。作者が書いた当時は25才。才気溢れ、狂気を隠し持った若者がその頭の中でははっきりとした意図をもって書いたものは、すぐに読み解けはしない。しかし、あきらめるのはもったいないから、読み終えたらすぐに皆、思うのだ。もう一度読もうと。2015/10/12
Vakira
59
凄い。今までにない読書体験。ピンチョンの文学の可能性に対する挑戦。新たな文学パターンを開拓した感じだ。時間、場所、登場人物の異なる話が、平行して進行し最後に繋がる物語はあった。しかしこのV.は収束しない。登場人物毎の物語があり、どんどん膨らみ拡散していく。ハチャメチャ青春物語、性愛、サディズム、ロリコン、宗教、政治、スパイ、哲学、神話、歴史そしてSF。この拡散物語、強いて言うなら熱力学第二法則小説だ。面白いのは急に作者登場。読者に語りかけV.の謎解きを始め出す。これってメルヴィルの「白鯨」のオマージュ感。2016/07/11
扉のこちら側
58
2016年141冊め。【138-2/G1000】どこまで信用できるのかわからないステンシル(息子)が集めた情報を、ステンシル(息子)当人が編集したというエピソードで、Vに関する奇妙な話が止まらない。ヴィクトリアと? ヴェロニカと? ヴェラ? レディVと? バッド・プリ―ストと? マルタ島での「現在」の物語の終焉に驚愕。 VVVVV。2016/03/03
zirou1984
56
進化とは決して進歩的、前進的ではなく、evolutionの語源通り巻物を広げるように様々な形を取りながら、ゆっくりと具体的に表れていくものを指す。それは歴史に於いても同様で、合理的な法則を取るのではなく単にそれぞれの状況からその時々で選ばれたという偶然性を内包しているものなのだ。だからこそ歴史は一筋の線で語れないし、陰謀史観はパラノイアに結びつく。君たちは雑誌ムーにお帰り。ピンチョンは何にも囚われない。全てを楽しめ。keep cool, but care、どんな時もクールにやろう、でも心遣いは忘れずに。2015/04/30
mii22.
49
ん?結局どんなストーリーなんだ?ステンシル(子)は、プロフェインはどうなった..〈V.〉はあの人物?下巻も登場人物、時代、場所が入り乱れて、随分振り回された読書になったが、個々のエピソードは陰謀あり、冒険あり、バカ騒ぎあり..謎が謎を呼び、とても面白かった!各章ごとのエピソードを、時系列を並べかえて順序よく読んでいけばストーリーを理解できるのだろうか。いつかまた、再読するかもしれない..いや、しないかもしれないカナ。2016/10/11