ラブ・ストーリーを読む老人

ラブ・ストーリーを読む老人

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  • サイズ B6判/ページ数 167p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784105363017
  • NDC分類 963
  • Cコード C0097

内容説明

エクアドル東部のアマゾン上流、「牧歌的な村」エル・イディリオにも開発の波は押し寄せています。生活を脅かされた先住民や動物たちはさらに奥地へと移動しています。そんなある日、外国人の惨殺死体が運ばれてきます。人間たちの横暴によって追いつめられた山猫(オセロット)が人間を攻撃してきたのです。動物たちを知りつくしている老人も山猫討伐隊に加えられます。自分の身と生活環境を守るために人間を襲った山猫に、老人は引き金を引くことができるのでしょうか…湿った森の豊潤な世界を舞台に、人間の野蛮さを静かに訴える珠玉の小品。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

どんぐり

87
チリ人の作家セプルベダは、3年前に新型コロナウイルス感染症で亡くなっている。この小説は、原著が1989年、翻訳は1998年に出版されている。エル・ドラードを求めて入植者がジャングルの奥地へ奥地へと入りこんでいた時代の物語だ。エクアドル東部のアマゾン上流で一人の惨殺体が発見される。先住民による殺害が疑われたものの、オセロット(山猫)によることがわかり討伐隊が組まれる。そこにガイド役として登場するのがアントニオ・ホセ・ボリーバル。→2023/04/12

藤月はな(灯れ松明の火)

79
連想したのは『老人と海』でしたが、自然に敬意を払わない者のせいで人の肉の味を覚えてしまった山猫。犠牲を出さないために山猫狩りに参加した老人だが・・・。太っちょに本当にイライラさせられ、所々に出てくる入植者と現地の人との格差や自然への敬意の違いに遣る瀬無くなる。そして連れ合いが死ぬのが恩寵に思える程、苦しんでいるのを見るしかなかった山猫が狂ってしまった場面が無性に悲しかった。失われてしまった尊厳を悼み、愚かさを重ねて何もできない人間を憎悪しつつも老人は文明(ラブストーリー)に帰っていく。でもそれは恥ではない2019/05/09

キジネコ

47
生かす森と殺す者達。アマゾンの奥の息苦しく濃密な緑、原始の森の生命の岸辺に暮らす一人の老入植者の傍らを権力の横暴、欲に塗れた山師が通り過ぎる。降り続く雨の音、記憶の水底を漂う記号の影、訥々と拾い読む言葉、老いた男の耳元で愛の小説は何を囁く?子供とオスを殺され悲しさに染まり憎しみに狂う一頭の雌オスロットが人を狩る。彼女を止める為に密林に踏みとどまる老人。死が、狩るモノと横たわるモノに二つの命を分けた時、男は彼女を抱いて涙を流し、死に準じる尊厳の前に己を恥じる… ああ美しい。鼓動、雨音、見えざるモノの息遣い。2014/01/24

棕櫚木庵

23
自然に溶け込むように,所有や嫉妬とは無関係に愛し合い,死期を悟るとある飲み物でまどろみ,身体を蟻に喰わせる・・・そんなシュアル族は,道を切り開く強力な機械に追われて奥へ,奥へと移動して行く.アントニオ・ホセ・ボリーバル老人は,そんなシュアル族とほとんど一体になりながらも,同化はできない.また,オセロットという“自然”を理解しながらも,対立せざるを得ない.彼は,「アマゾニアの処女林を犯し続けるすべての人間たちを呪い罵」るが,その一方で自分も人間の一人であることを否定できない .→2022/09/25

ヘラジカ

8
人間と自然、同じ道を歩みながらも文明の圧力を受けて衝突せざるを得なくなる者たち。それら被害者同士の妥協を許さぬ対立を老人と山猫の対決に凝縮している。テーマとしてはバルガス=リョサの『密林の語り部』に似ているかもしれない。こう言った問題は、密林とそこに住む者たちを愛する人間にとっては切実なものなのだろう。短いながらも素晴らしい作品。このページ数でアマゾンの豊潤な自然が堪能出来た。しかし、予期せずしてと言おうか、読みやすい割に内容が大変濃いので、どっぷり浸かりきった読書となった。2013/10/01

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