感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
まふ
109
重厚な余韻のうちに物語は終了した。19世紀の偉大な詩人二人の禁断の恋、それが綾なす絹糸のような光沢と陰影に彩られて今日の二人につながっていくとは、何という豊饒な世界ではないか。こうした世界をすべてパスティーシュとして作り上げなければならなかった、と作者は語る。うむ、そうであろう、と納得するも、その、あまりにも「それらしく」創造された世界にただただ驚くとともに、この作者の深く広範な知識・学識とその華麗な文章力にひたすら感心するだけである。⇒2024/12/29
Ryuko
20
19世紀の詩人の恋を現代の研究者たちが古い書簡を通して解き明かす。ラストは書き過ぎという批判もあろうかと思うが、私は心が温かくなり、19世紀に生きた登場人物たちを思い、この結末を用意してくれた作者に感謝し、読了後、本を抱きしめた。あまり詩を読まないので、詩の部分は斜め読み。「でも、私、詩は好きじゃないの」わかるよメイ。 2017/11/19
noémi
7
原題は「ポゼッション」という。しかし誰の心も「所有」はできない。なんとも意味深長な言葉だと思う。それにしても、なんと複雑で繊細なロマンスであることか。19世紀前半と1980年代を行きつ戻りつして、進行するふたつの愛の形。その愛はまるで違っているように見えて、実は酷似している。繊細な優雅なお話なのに、最後はちょっとハラハラドキドキのサスペンスのおまけがついていて、読み手を飽きさせない。イギリス独特の落ち着いた抑揚が利いていてとてもよかった。映画もみたいな。2010/11/15
きりぱい
6
偶然発見された手紙の下書きは秘められた恋文なのか!文学界の常識を覆すかもしれない謎を追って、19世紀の詩人たちの軌跡が紐解かれてゆくと同時に、もどかしくも現代の研究者たちのロマンスも展開。すごいのは小説の中にある創作で、描き分けられた書簡や日記はもとより、神話のような挿話や文学の顔出し、特に幻想味の強い詩など、ストーリーを追いたい読みを阻むとも奥行きを与えるとも味わいきれない濃さに圧倒!19世紀は胸苦しさ、現代は利権に絡む緊迫感と、下巻に至って貫禄の面白さ。最後の手紙と幕切れの二段構えで泣きに泣く。2010/10/28
takeakisky
1
いくつかの露骨な小説的シンクロニシティで通俗におちかけるが、ぎりぎり踏み止まる十五、六章。そこからは、ぞくぞくし続ける。タイトルは、絶対手に取らないタイプの本。タイムマガジンのオールタイムベスト100だから読んだわけで。ブックリスト万歳だ。帯の惹句は信じたことがないけれど、確かにわたしにとっても完全に近い小説。装丁含め、本を読む悦びを十全に満喫できる。慈しむように読み、静かに打ちのめされる本。心地よく秘密めいたところとか愛のゆくえなんかと並べて本棚に置こう。褒めすぎると心配になるけれど、いい本。2023/10/27




