内容説明
アメリカ新世代の作家が描く家族の再生の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nina
24
著者の少女時代(1966-1979)をモデルに描かれた連作短篇集。はからずもアニー・ディラードの自伝的エッセイ『アメリカン・チャイルドフッド』から続けて読んだせいか、どうしても比較してしまうが、ディラードが静謐な眼差しで少女時代の自分を言葉を尽くして深く掘り下げるのに対し、マイノットの場合、自分の記憶をフィクション化する課程における裏漉し作業のような工程で彼女の中に留まらせ小説内では言葉にしなかったものが、物語の情景を包む空気となって響いてくるかのようで、かえって非常に個人的で生々しいような感覚があった。2015/04/27
donut
9
東海岸で暮らす9人家族の13年間を描いた自伝的連作短編。家族間の微妙なぎこちなさや繊細な愛情表現を、登場人物の細かな仕草を通して鮮明で具体的に描けるのはやはり著者自身の記憶に基づいているからだろうか。賑やかで一見幸福な家庭でありながらも、最初の短編から既に不穏な空気が漂っており、読み進めるにつれて次第に、陽気で前向きな母親に対して精神的な弱さが強調される父親の存在がその主要因として朧げに浮かび上がってくる。頻出するカトリックのテーマやニクソンの話など背景知識を身につけてから読み直したい。2020/02/27
azimuth
2
談笑の後一瞬訪れた沈黙がもたらす薄ら寒いような感覚は、誰でも味わったことがあるのでは。そのような言葉にはしにくいが誰もが共通して持っている「感じ」がうまく捉えられている。「ナビゲーター」の結末なんか、個人的にはぐっときた。良くない意味で。帯にはサリンジャーと関連付けたコピーがあったけど、「家族連作・中心的存在の死・子沢山」と共通点多いものの印象はまったく異なる。グラースサーガはどの系譜上にあるのかちょっと不明瞭だが、マイノットははっきりと現代米文学、とりわけ女性短編作家の前身だと考えることができそう。2011/07/25
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