内容説明
創作とは多大な犠牲を強いるものであり、将来の保証は何もない。それでもなお小説家を志そうとする若い人へ、心から小説を愛している著者が、小説への絶大な信頼と深い思いを込めて宛てた、感動のメッセージ。
目次
サナダムシの寓話
カトブレパス
説得力
文体
語り手。空間
時間
現実のレヴェル
転移と質的飛躍
入れ子箱(チャイニーズ・ボックス)
隠されたデータ〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マエダ
97
バルガス・リョサが小説を書くことについて手紙というメッセージをとおして語っている。小説を書くには地道な努力の積み重ねしかない。本書からはリョサのフィクションに対する情熱がすごく伝わる。”ものを書くということは美しいが多大の犠牲を強いるものであり、それを仕事として選びとった人は、生きるために書くのではなく、書くために生きるのである”2016/07/08
nobi
74
ですます調の翻訳もあってか語り口は穏やか。だからかその声が間近に聞こえる。粗暴なシーンも多い小説家の手紙とは思えない程。血気盛んというイメージの作家にしては理知的な論展開も意外。捉えどころのない小説の構造(文体、語り手、転移等)を物理現象の如く解明してゆく。時に辛辣な批評も交えながら80近い作品を証拠に差し出す。次元の違いを感じてしまうその収集力の凄さ。誰もが素通りしてしまいそうな痕跡も見落とさない。そして何より彼が敬愛するフローベルと同じく、文学に身を捧げた者のみが発することのできる気迫ある言葉が並ぶ。2022/11/01
拓也 ◆mOrYeBoQbw
37
文学講義集。若い作家がバルガス=リョサに書簡を送り、その返信をリョサが書いたという形式で書かれた小説技法や作品に関する講義ですね。フローベール、フォークナー、カフカ、ボルヘス、コルサタル等々の様々な名作を例に挙げ、小説家の在り方やテーマ&文体&プロットの在り方、フィクションや技巧の在り方などをリョサ流に語っていきます。分量がそれほどでもないので技巧や手法の解説書としては初歩的な内容ですが、それより寧ろ、例として挙がっている名作の読み方、リョサがどのような本の読み方をしていたのか解るのが面白いですね~。2016/11/09
三柴ゆよし
22
「文学の仕事というのは、暇つぶしでも、スポーツでも、余暇を楽しむための上品なお遊びでもありません。 (略) 自らの意志で文学に仕え、その犠牲者(幸せな犠牲者)になると決めたわけですから、奴隷に他ならないのです」。引用の通り、若い小説家諸氏の意志を挫くかのごとき警句に満ちております。これがカンフル剤になる人はよっぽどだろうが、著者の文学に対する真摯な姿勢には思わず胸を打たれる。小説家の覚悟を指南すると同時に、優れた「文学入門」になっているのも本書の魅力。小説の読み方に新たな地平が開けるかも。2009/09/12
ドン•マルロー
19
書簡形式で書かれた小説論。リョサがいかに文学を敬愛していたのかよくわかる。作家志望の人のみならず、読書案内としても良書の部類に入るだろう。個人的には晩年のコルタサルが「どんどん文章が下手になる」とリョサに語っていたというエピソードが気に入っている。2019/12/22