出版社内容情報
何を生きたか、ではない。何を記憶し、どのように語るか。それが人生だ――。
祖父母とその一族が生きぬいた、文字通り魔術的な現実。無二の仲間たちに誘われた、文学という沃野。ジャーナリストとして身をもって対峙した、母国コロンビアの怖るべき内政紛乱……。作家の魂に、あの驚嘆の作品群を胚胎させる動因となった、人々と出来事の記憶の数々を、老境を迎えてさらに瑞々しく、縦横無尽に語る自伝。
内容説明
祖父母とその一族が生きぬいた文字通り魔術的な現実。無二の仲間たちに誘われた文学という沃野。さらにはジャーナリストとして身をもって対峙した母国コロンビアの怖るべき内政紛乱…。世界文学の現在を牽引し続ける作家の魂にあの驚嘆の作品群を胚胎させる動因となった人々と出来事の「記憶」の数々を老境に到ってさらに瑞々しく、自在に語り尽す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
75
(略)本書は、「祖父母とその一族が生きぬいた、文字通り魔術的な現実。無二の仲間たちに誘われた、文学という沃野。ジャーナリストとして身をもって対峙した、母国コロンビアの怖るべき内政紛乱……。作家の魂に、あの驚嘆の作品群を胚胎させる動因となった、人々と出来事の記憶の数々を、老境を迎えてさらに瑞々しく、縦横無尽に語る自伝」という、自伝なのだった。2009/12/09
Gotoran
55
G.G=マルケスの青年期までの半生が語られた自叙伝。祖父母と過ごした幼少期の微笑ましい日々、寄宿舎で過ごしたボゴダでの中学、高校時代、貧しかったが厚い友情を育み文筆に磨きをかけていった。少年時代からの自分の文学史、軍部、保守、リベラル、共産と入り乱れたコロンビアの政治史…文学への情熱、音楽を愛し、女性を愛し、かけがえのない友情を育んだ青年期が眩しく語られた。分厚かったが引き込まれた。まさに語りの宝庫だった。2021/02/27
touch.0324
41
ラテアメの巨星ガルシア=マルケスの自伝。青年期までの彼の半生が綴られている。ただの自伝かと思っていたがそうではなかった。第4章の冒頭を例に引く。《そのころのボゴダは、十六世紀の始め以来の霧雨が夜も眠らずに降り続いている遠くて陰鬱な町だった。》ガボらしい魅力に溢れた一節である。魔術的リアリズムとジャーナリズム、この相反する二つを共存をさせた源泉は、カリブの肥沃で自由で予測不能な土地柄、予期せぬ物語を生む風土にあった。カフカ『変身』との出会いに上気し、ボルヘスを読み漁り、掛け算が苦手な幼少期のガボが愛らしい。2014/09/30
chanvesa
37
自伝と言うよりあたかも小説であるかのよう。だけど、彼の小説に比べるとちょっと全体がゆるいような気がする。よく読み込んだら印象が違うのかもしれない。ジョイス、フォークナーの影響が強いことがよくわかる。売春宿や娼家の記述が出てくるが、想像するコロンビアの気だるい暑さと娼婦の発する湿度や匂いに人生の縮図や苦味を見るかのよう。「作家にとっていちばんいい住まいとは娼家である、なぜなら、朝が静かで、毎晩お祭り騒ぎがあり、警察と共存しているから(457~458頁)」という言葉は単なるマチズモに終わらない気がする。2016/08/07
nina
31
コロンビアのカリブ地方に生まれ祖父母と暮らした幼少時代の思い出から、幾つかの短篇を発表し新聞記者として活躍し始めた矢先、さまざまな圧力から逃れるため取材と称してジュネーヴへと旅立つ涙の別れの場面までを描いた"ガビート"の自伝。彼の若き日の迷いや情熱、哀しみや歓びがギュウギュウに詰まった666ページに及ぶ壮大な物語は、彼も含んだ一族の、すなわちもう一つの「マコンド」の物語でもあり、コロンビアという複雑な成り立ちの国の歴史でもある。大胆でセンチメンタルな恋の冒険譚が微笑ましい。続編は未完なのか気になるところ。2014/08/11