内容説明
夫を不慮の事故で亡くしたばかりの女は72歳。彼女への思いを胸に、独身を守ってきたという男は76歳。ついにその夜、男は女に愛を告げた。困惑と不安、記憶と期待がさまざまに交錯する二人を乗せた蒸気船が、コロンビアの大河をただよい始めた時…。内戦が疫病のように猖獗した時代を背景に、悠然とくり広げられる、愛の真実の物語。1985年発表。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
311
51年9ヶ月と4日間、報われることなくフェルミーナを愛し続けたフロレンティーノ。もっとも、その間に彼は「無数のつかの間の恋を別にして」622人もの女性と関係を持つのだが。一方、フェルミーナは夫と「本当に愛しているかどうかも分からないまま何年も間幸せに暮らす」のである。時間のスパンの長い長い小説だ。そして、その間にマグダレーナ川からはマナティも猿も鸚鵡も姿を消していった。この後、『迷宮の将軍』にも再び登場するこの川は、ある意味では小説の隠れたる主役だともいえるだろう。小説の最後の1行は意味深く実に感動的だ。2014/07/29
starbro
250
G.ガルシア=マルケスの著作を過去に何作か読んでいます。 未読の本書が書店の新刊の棚に並んでいたので、新刊かと思いきや、1985年の作品で、本書は2006年発行でした。先日の「ラテンアメリカン・ラプソディ」に触発されたこともあり、読みました。新型コロナウィルスで「ペスト」がリバイバルヒットしたのと同様で、書店員が二匹目の泥鰌を狙ったのでしょうか?本書は、半世紀に渡る情愛の物語、著者もこのような物語を書くのが少し意外でした。 https://www.shinchosha.co.jp/book/509014/2023/05/13
遥かなる想い
165
1860年代から 1930年代にかけてのコロンビアを舞台にした物語である。 51年9ヶ月 相手の女性を待ち続けるという時間軸の長さに圧倒される。 長い人生を 過ごした二人の胸には 何が 浮かんだのだろうか?数多くの女性と関係を持ちながら、76歳まで 独身を通したフロレンティーノ…これから 長い二人の日々が始まるという 若い恋とは 違い、高齢者の恋には 何が見えるのだろうか?最後は ほんのりと暖かい、そんな作品だった。2019/10/06
ケイ
143
私がフェルミーナなら、こんな男はお断りだ。何百人とも関係しておいて、50年も待ったはないと思う。彼が肉体関係を持ちながらも誠実ではなかった女性たちの中には、彼がフェルミーナに去られた時のようにつらい想いをしたかもしれないという想像力も持ちあわせていないのだから。ようやく想いを達した彼は、彼女との関係は想像ほど満足するものでなかったとは言えないだろう。ろくに動かない身体を持て余しては、夢見た事を成し遂げる以外にはないではないか。フェルミーナと夫との愛に太刀打ちできるものではないと思えた。2016/02/12
どんぐり
103
身体は衰えても、愛の炎は消えない。そんな言葉が思い浮かんだ。フェルミーナ・ダーサを待ち続けたフロレンティーノ・アリーサの51年9か月と4日。純粋に愛を貫いたといえば聞こえはよいが、グロテスクでもある。ありえない話だけれど、この重厚な物語はガルシア=マルケスだから楽しめる。老いの酸化した匂いに包まれながら「失望の生み出す幻想を越え、愛をも越えて」抱き合う二人、いったい彼らは相手に何を見ているんだろう。2020/01/15