感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
92
世界史において疫病がここまで影響を及ぼしているかを知ると驚かされます。多くの戦争が起きていますが、軍隊よりも病原体の方が何倍も恐ろしいものには違いありません。人類が栄えれば必ず新たに病原体が生まれ、寄生体として蝕んでいく。それを世界史と並行して語っているのが興味深いです。疫病はいかなる場所でもうまく適応しながら歴史の中に潜みつつ、人類を脅かす存在へと変化していったことがよく分かります。これからも新たな疫病が生まれていくのかもしれないと考えずにはいられません。2015/12/10
Miyoshi Hirotaka
25
感染症も人間と同様に地球上で種を拡大する機会を狙っている。人間は、農業の機械化や窒素肥料による食料増産により人口を爆発的に増大させた。一方、疫病は帝国の興亡、巡礼、大航海などの移動の拡大と高速化によるパンデミックで人口構成に影響してきた。日露戦争でわが国の防疫の成果が世界に注目されるまでは疫病が優勢。というのは、病気による損耗が敵軍の軍事行動による死者に比べ四分の一だったからだ。それまでは、ボーア戦争で5倍、クリミア戦争では10倍と病死の方が圧倒的に多かった。人間と感染症の果てしない戦いはこれからも続く。2020/12/17
Homo Rudolfensis
12
☆4.0 とにかく文字が小さい!これから読む人には文庫版をおすすめします。それを除けばちゃんと面白かったです。今ではそれなりに多いかと思いますが、この当時では疫病に着目した歴史研究は少なかったみたいで、先駆的な存在です。ウイルス等の感染であるミクロ寄生と、人間同士の支配構造によるマクロ寄生という画期的な枠組みを作り、それを基に世界史を考察していて、それがために、著者もあまりに演繹的ではないかという批判を覚悟しているようですが、一方で自身の理論に大きな間違いはないだろうという自信も持っているそう。2021/10/22
鯖
12
ペストコレラ天然痘はインド生まれという通説は高温湿潤な気候で、人が密集し、家畜の群れと接触しながら生活していた場所だからという指摘に納得。どの病も風土病がゲルマン民族の大移動や十字軍、モンゴルの遠征、大航海時代等の人の移動によって、全世界へ広がり、免疫をもたない人々の間に大流行する。戦争そのものよりも、その結果としての人の移動がもたらした病のほうが害悪としては大きいのかも。教科書に書かれている出来事と天災や疾病を絡めて考えることってあまりなかったのだけれど、昔から大きな要因だったのだなあと改めて。2018/11/28
ばななうゆ
10
1985年発行だから、それほど古い本ではないと思うけれど、小さくて読みにくい書体で読む気力が失われました。内容はもちろんのこと読みやすくする工夫も必要ですよね。しかも完全に翻訳調の文章、辛かった。内容は歴史的に大きな出来事に疫病が関わっている可能性があるということ。ひょっとしたら恐竜の絶滅にも感染症が関係してるかもしれない?と想像が膨らんだ。今のコロナも歴史の中では起こりうる現象なんでしょうね。上下巻に分かれている文庫本なら読みやすいのかもしれません。2021/10/11