出版社内容情報
「病める者、不運な者はすべて有罪!」150年前にシンギュラリティを予見した奇跡の小説が現代に蘇り、私たちの社会を抉り出す。
内容説明
羊飼いの青年が開拓地を求めて挑んだ険しい山、その向こうに謎の国「エレホン」はあった。手づくりの清潔な街並みに住む人びとはみな優しく、健康的で美しい。でも、それには“しかるべき理由”があった。病める者、不幸な者が処罰される一方で、お金持ちは罪を犯しても心の迷いとして許される―。自己責任、優生思想、経済至上主義、そしてシンギュラリティ…150年前、自由主義経済の黎明期に刊行されたイギリス小説があぶり出す、現代人が見ることになりそうな未来、人間の心の暗がり。
著者等紹介
バトラー,サミュエル[バトラー,サミュエル] [Butler,Samuel]
1835‐1902。19世紀後半に活躍した英国の作家。父は英国国教会の牧師、同名の祖父も名門パブリックスクールの名校長で聖職者。ケンブリッジ大学を卒業するも、父にならって聖職者になる道を拒み、当時の新興植民地ニュージーランドに入植、牧羊業で財を成し、帰国。絵画、作曲を学ぶも、文筆の道へ
武藤浩史[ムトウヒロシ]
1958‐。英文学者。慶應義塾大学教授。英国ウォリック大学大学院博士課程(Ph.D.)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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まふ
124
地上の何処にもない(Nowhere)国Erewhon(エレホン=逆読み)に突然迷い込んだ主人公(語り手)がその不思議な国の体験を語る。ディストピア小説というわけでもないようだが我々の世界とは異なる制度・習慣・価値観が次々に現れる。病気は刑事罰となる。犯罪は原則許されるが矯正師の矯正を受けなければならない。大学は「仮説学」を学ぶところ(=屁理屈を養成するところ)、銀行は失うところ、機械は社会悪でありラッダイト運動のごとく廃棄されるべきだ…。イヤァ、チョーオモロイではないか。⇒ 2024/07/15
ふみあき
49
ハックスリー『すばらしい新世界』に先駆するディストピア小説の古典。古典特有の(?)冗長さというか、まずエレホンに入国するまでが相当長い。それと原文からして晦渋なのか、翻訳がまずいのか、私の理解力がお粗末すぎるのか、文意の取れない箇所が多くて、しんどい読書だった。また(訳者解題にもある通り)、そのエピソードで語りたい作者の真意がつかみづらい。もちろん生誕をめぐる理不尽さが語られる第18、19章は、少し前に流行った反出生主義を思わせて興味深いし、「本能によって是正されない理性」の質の悪さなど、鋭い指摘も多い。2023/05/18
慧の本箱
19
一見ユートピアに見えるがその実ディストピアな国エレホンにたどり着いた英国青年の話。上梓されたのは1872年。この19世紀はイギリスを中心とした西欧の大発展期でそれに伴い、あらゆる問題が浮上してきている状態。そんな問題を著者は逆手にとって架空のエレホン国を舞台にして逆さまな世界と二重性を読み手に投げかけてくる。そしてそれは現代社会にも通ずる問題でもあることに驚かされる。2021/05/24
⭐
7
引き込まれるような、不思議な物語で、最後まで楽しめましたが、今の私の読解力ではまだ、この本を理解しきれていないのだろうな、とも感じました。 ただ、自分がなにか凄いものを読んでしまった、という感覚だけは、たしかに私の中にあり、いつか、私がもう少し大人になってから、またこの本を読んで、この凄さの正体を知ってみたいと思いました。2021/06/01
刳森伸一
6
羊飼いの男が金鉱を探して山脈へと入り、道に迷った末、美男美女が闊歩する謎の国エレホンに辿り着く。そこでは独特な文化と考え方が栄えた男の母国イギリスとは全く異なる国だったという王道的、古典的ディストピア小説。ディストピア小説らしい退屈さはあるものの、興味深い記述も多い。特に極度の自己責任論が推し進められ、病気になることが犯罪とされる点やその関連箇所には色々と考えさせられる。2020/08/16
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