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出版社内容情報
現代の管理社会の源流となった監獄。その監視と処罰と矯正のシステムに迫る! 肉体に苦痛を与える刑から魂を罰する刑へ――監獄はどのような歴史的社会的な背景のもとで成立したのか。監獄という制度から生まれた人々を監視し管理する技術とは何か。そうした技術はなぜ学校や軍隊、工場にも及んでいくのか。国家権力の集中機構としての監獄を独得の考古学的手法を駆使して捉え、その本質と特徴を解明する。
内容説明
十字架刑や絞首刑のような見せしめをともなう残酷な刑罰は18世紀の末に終わった。以後、囚人や犯罪者は監獄に収容して矯正し、社会復帰させるものという認識がはじまる。肉体の刑から魂を罰する刑への移行である。国家権力はどのようにして監獄を管理するに至ったか。フーコーのいう「監獄」とは犯罪者を収容する場所にとどまらず、孤児院、感化院、施療院、さらには学校、軍隊、病院にも及ぶ。人間の意志や多様性を統御し、国家の機構に組みこむ、監視と処罰による権力のメカニズムを探求する画期的思想書。
目次
第1部 身体刑(受刑者の身体;身体刑の華々しさ)
第2部 処罰(一般化される処罰;刑罰のおだやかさ)
第3部 規律・訓練(従順な身体;良き訓育の手段;一望監視方式)
第4部 監獄(「完全で厳格な制度」;違法行為と非行性;監禁的なるもの)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
74
罪の応報としての身体刑から精神の矯正へ。君主の超権力に対する戦いと資本主義の発展により18~19世紀に起きた変化を辿ることで作者が露わにするのは、人間を「或る規格」により評価・差異化・矯正する没個人化した権力装置で、この技術が多様な近代の個々人を造り出したと作者は言う。この「個人性」を造ると同時に人間を経済的・効率的な規格に服従強制させる諸形式は学校や病院など社会全体に広がって、近代の「下層土壌を成してきた」のだと。作者が炙り出した、近現代を支える「暗闇の斜面」の精緻で暗い美しさに圧倒も魅了もされました。2024/08/01
ころこ
55
読む必要があるのは後半の第3章と第4章で、前半は読み飛ばしても問題ないと思います。他人同士の大規模な社会をつくっていく中で、文学が近代的な内面を形成するのに役立った、とは肯定的な意味で使われます。他方で規律訓練は、同じ内面、同じ身体性をつくることによって個人を規格化し、大規模な社会をつくっていくことに役立ちますが、それは否定的な意味において監獄と呼ばれます。個人化することで匿名的で機能的な権力が立ち現れ、自ら権力的状況の中に組み込まれ、権力維持の一部となるように作動します。制度としての監獄がありますが、監2022/01/18
ケイトKATE
36
18世紀途中まで罪人への処罰といえば、斬首や八つ裂きなどの身体刑であった。この身体刑は非常に残酷なものであるという批判が高まり、懲役刑が主流となり監獄が建設されていった。監獄における処罰を効率的に行うために、規律と訓練が導入された。やがて、規律と訓練は軍隊や学校、工場などあらゆる場所へと導入されることになった。それにより、権力は人々を効率的に監視できるようになったのである。監獄という私達から縁遠いものが、実は人間社会において、大きな影響を与えていることをミシェル・フーコーは見事に証明させた。2021/01/17
ヒナコ
18
犯罪者(「非行者」・逸脱者)に対する刑罰の形式は以下のように変遷していった。国王への反逆を企てた人物の身体が華々しく罰せられる中世の刑罰の形式から(第一部)、啓蒙主義的な万人に開かれた法による犯罪者の処罰(第二部)を経て、個別空間に閉じ込められた囚人が自分の内面を見つめ直し、自らを馴化させていくような近代的監獄(第三部)へ。 このような変遷を跡付けていく中で、フーコーは主体が王の権力に制約されていた中止から、規律権力を内在した法や監獄的な制度によって主体が積極的に算出される近代への移行を指摘している。 →2022/09/11
koke
12
権力観をひっくり返す名著。「規律・訓練」を自分なりに言い換えると、身体を内面からコントロールする技術(しつけ)。規律・訓練する権力は至るところにあり、野蛮な身体刑もなく一見優しいこの社会も、歴史を踏まえれば「監獄群島」に見えてくる。権力の姿が見えづらい分、抵抗はさらに困難になった。まずは「系譜学」によって自明なものの自明性を切り崩すこと。フーコーに続け。それにしても、長年の積ん読が片付いて感無量。2022/04/10
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