内容説明
幼時に戦死し、記憶の片隅にすら残っていない父。だが父親であることにはかわりはない。母親の求めに応じて父親の過去の姿を探り、やがて思いは自分の少年時代へ…。―古典の祭壇に奉られることなく、いまなお鮮烈な輝きを失わないカミュ。自動車事故死のため執筆を中断せざるをえなかったカミュ最後の未発表長編―。壮大な自伝的作品として構想され、カミュの全体像を捉える鍵を握っている未完の長編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kthyk
21
カミュの遺作は「最初の人間」。1960年、パリに戻る国道での自動車事故で生涯を終えた。鞄の中にはまだ未完であった、この原稿。出版はその34年後。1913年、大粒の雨の秋の夜の馬車はアルジェリアというよりチェニジアに近いソルフェリノ村へ。彼を身籠った母は到着後直ぐに「最初の人間」を出産。一年後、父はアルジェリア兵としてパリ近郊マルノ河で戦死。この書はアルジェの中学のサッカー選手である彼までだが、カミュが描きたかったのは、悲劇ではない、「人間」に対するリスペクトだ。読み終わりは深夜だったが、気持ちの良い朝だ。2022/03/23
まちなみ
0
カミュの本をはじめて読んだ。ここに書かれている貧困ということやその生について、かすめとることすらできなかったような気分になった。2016/03/15
しょこ
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カミュの温かい眼差しを通して映る世界には、どんな時でも愛がある。きっと私の世界にも至る所に愛はあるはずで、見逃さないようにしたいと思った。2012/11/11