出版社内容情報
芸術の起源とは、人間の意識の起源である。そこにこそ、現代を生き抜くための手がかりがあるのではないか。作品図版多数、中沢新一氏との対談も収録!
目次
アートの起源
光学硝子五輪塔
いにしえの景色
冷たい眼と熱い眼
宝物の記憶
魔の差す場
写真学事始め
落ち着きの暮らし
観念の形
おだはら
鸚鵡島の鳥篭
天使来迎図
歪曲的宙感
時の浮き橋
三夕茶会
今冥途
落石注意
高松宮殿下記念世界文化賞を受賞して
対談 歴史の歴史―杉本博司×中沢新一
著者等紹介
杉本博司[スギモトヒロシ]
東京、下町に生まれる。立教大学経済学部卒業後渡米、ロサンジェルスのアートセンター・カレッジ・オブ・デザイン卒業後74年よりニューヨーク在住。現代美術作家として、世界各地の美術館で個展を開催する。2009年建築設計事務所「新素材研究所」を東京に開設、静岡県長泉町にIZU PHOTO MUSEUMを設計する。2011年、主宰する小田原文化財団が、公益法人として認可され、財団の活動として「杉本文楽曾根崎心中付り観音廻り」を神奈川芸術劇場にて公演する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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アキ
92
4万年前のネアンデルタール人は墓を作っていた。死者の記憶を留めるための装置としての墓標が使用目的を持たない造形物としてアートの起源と考えられる。人間は時間を遡る意識という能力を持ったことにより世界の始まりを捏造する必要に迫られ、神話が生まれたのだとしたら、宇宙物理学が提唱するビッグバン理論も擬世界統一神話として将来振り返られるようになるのかもしれない。雷は神の怒りであり龍の顕現であり怨霊の祟りであったりした。ベンジャミン・フランクリンが雷を電気であると証明するまでは。表紙の杉本の写真はアートの起源を表す。2020/12/28
zirou1984
36
同時期に撮影されていたドキュメンタリー映画『はじまりの記憶』と同じ題材の表紙が使われていることから明らかなように、映画と書物が双子のような関係性を帯びている。前者が監督による「編集された杉本博司」によって制作現場や作品を俯瞰する立場を描いているのに対し、こちらは著者自身の言葉から滲み出る教養や粋に触れることでその奥行きを知れるものとなっている。巻末にある中沢新一との対談ではU2のアルバムの件についても触れられているのだが、アートワークだけでなく作曲の初期の段階から関わっていたという話が衝撃的だった。2016/10/17
どんぐり
25
杉本博司は現代美術の造形作家である。直島にあるヴェネッセハウスで、彼の『海景』シリーズを見たのは、2年前であった。この頃、「杉本博司アートの起源」展が丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で開催されていたが、見ることができなかった。この本は、この展覧会の図録の作成過程で、作品をかたちづくるイメージが言葉に触発されながら浮かび上がってくることを「作品」に併記して著したもので、作品の解説書ではない。巻末には中沢新一とのアート談義も収録している。「アートとは技術のことであり、眼には見ることのできない精神を物質性のある形に作2013/09/19
金木犀
4
江之浦測候所を訪れて買った一冊。元々杉本博司さんの作品に惹かれていたけど、その思想を深くは知らなかった。この本を読んで芸術というものがいかに人類の起源、宗教、そして見えないものに隣接した場所にあるかを知ることが出来た。新しいものを取り入れるよりも無意識下にある過去を思い出すための芸術のあり方に賛成したい。2020/02/24
⇄
2
素晴らしいね。 アート、或いは人間に対して、知的に、あくまでも淡々とした文章でありながら、そこを抜け出さないギリギリのところでは感情が見えるという不思議な本だった。この人のように生きてみたいな。2023/09/26