出版社内容情報
シンギュラリティに備えよ! 対・将棋、小説、絵画――。最新の知見を踏まえ、AIと人間との関わりを叙情的かつリアルに描き出す。
内容説明
VS.将棋、VS.小説、VS.絵画―。人工知能が、将棋の永世名人を破るときが来た。小説の面白さを分析、数値化し、それに基づいて魅力的な物語が生まれるようになった。ディープラーニングで創作を会得したAIが、「新作」の絵画を発表した。では、AIが制作した作品は「芸術」と呼べるのか?AIは人類と共存出来るのか?技術者とAIが次に目指す世界とは?人工知能は、芸術家の夢を見るか?
著者等紹介
瀬名秀明[セナヒデアキ]
1968年生まれ。1995年、『パラサイト・イヴ』で第2回日本ホラー小説大賞を受賞しデビュー。1998年、『BRAIN VALLEY』で第19回日本SF大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
keroppi
70
AIが将棋で勝ち、小説を書き、絵画を描く。現実に美空ひばりが唄を歌い、手塚治虫の新作が掲載されていたりする。決して、感動させるものではないが、もし、人を感動させるものが生まれたら、それは生命体なのか。人とAIの芸術論が興味深い。IQならぬSQ(共感指数)というものが出来て、読書メーターのようなサイトで、「自分のレベルが丸わかりになり、本の感想を公開することは恥ずべき行為に成り下がった」という話があった。もし、そんなものがあっても私は読書メーターに投稿するだろうな。2020/04/26
ぐうぐう
31
ロボット工学に関心を寄せた瀬名秀明がAIに辿り着くのは、当然の流れと言える。ケンイチシリーズを経て、本書ではAIをめぐる短編が4作収録されている。冒頭の「負ける」は、AIと棋士というベタな設定をあえて用い、AIは人間に勝てるかではなく、AIは負けを認め、投了することができるかを問うのが重要だ。投了とは死を知る人間だからこその行為であり、死の概念を持たないAIが投了できるのかと、瀬名は迫る。続く「144C」と「きみに読む物語」は、AIに小説が書けるかを描く。(つづく)2020/05/19
rosetta
30
AIを巡る四つの短編。「負ける」将棋で名人に勝ち知性の面で人間を凌駕する。「144C」次いで感性でも小説を書くと言う行為で肉迫する。「きみに読む物語」共感指数SQの概念が提唱され読書と言う行為が数値化される。小説が持つSQは読者への伝わりやすさ、読者が持つSQは読み解く力。それが合致しないと理解を超え受け入れられなくなる。最も効率的なのは標準偏差の本を標準偏差の読者に届ける事。この一編は読書メーター利用者に是非読んでもらいたい(笑)表題作では絵画に手を出し取り込み分析した作家の到達点を超えることまでする2020/10/07
ひさか
29
ランティエ2017年2月号:負ける、2017年7月BOC2号:144C、SFマガジン2012年4月号:きみに読む物語、週刊新潮2019年12月12日号〜2020年1月30日号:ポロック生命体、の4つの短編に若干の加筆修正を加え、2020年2月25日新潮社から刊行。負ける、は再読で、駒を指すアームの対戦者への礼という出来事の理由がはじめて理解できました。わかりにくい書き方になっているのが少し不満です。他のお話は、それほどシステムには触れず、シンギュラリティを語るには、世界観に不足な要素が多いように思います。2021/01/26
そうたそ
24
★★☆☆☆ AIをテーマとした作品を収める短編集。「負ける」のみアンソロジーで既読。どれも淡々とした語り口で、今や人類にとって身近なものになりつつあるAIについて色々と考えさせられるストーリーだった。中でも「きみに読む物語」は読書好きとしては、ある意味他人事ではないような話であり、個人的には好みではなかったかもという感想をまさに書こうとしてる今、話の中の一節を思い出し、ドキッとさせられる。2020/04/15