内容説明
僕は常に正しく行動している。姉を犯そうとした「アレ」は始末されるべきだし、頭の足りない無礼なヤンキーが不幸になるのは当然だ。僕のせいではない。でも、なぜか人は僕を遠巻きにする。薄気味悪い虫を見るように―。カフカ+マルケス+?=正体不明の肌触りが、鈴木光司氏の絶賛を浴びた異形の成長小説。第16回日本ファンタジーノベル大賞大賞受賞作。
著者等紹介
平山瑞穂[ヒラヤマミズホ]
1968年、東京都生まれ。立教大学社会学部卒業。通信教育関係の企業に勤務。『ラス・マンチャス通信』で、第16回日本ファンタジーノベル大賞大賞受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
fukafkacraft
5
異質なお仕事小説と思いきや兄弟愛の物語?奇妙にねじれたSF設定と虫酸が走るほど超現実的な職場での生々しい出来事が入り混じった独特な世界で、それだけでもお腹いっぱいなのに色々な特殊キャラが登場。彼らにまつわる物語が入れ子のようにサクサクと語られたりもする。時に得体の知れない異形のものに怯やかされる奇怪なイメージも入り込み、終始不穏な空気。夢の情景を断片的につなぎ思いつくままに筆を走らせた感じ。SFでもホラーでもない幻想異端文学あるいは奇書。途中で投げ出さす最後まで書いた作者を称賛する。2017/01/05
ホレイシア
4
ファンタジーノベル大賞受賞作だが、ほんと懐が深い。こういう狂気の世界、私は好きだけど、好き嫌いがはっきりしそうな作家さん。2008/10/04
cassyu
3
各章ごと短編意識で読むと異質なホラーだったり幻想小説だったり伝奇小説ぽかったりするのだけれど、すべて結末をこちらにゆだねてあるので、どこかに出口が見えそうなのに不条理の壁にぽよんと阻まれました。再読するか?と訊かれたら多分応えはNOなのだけれど、読書中は確かに惹き込まれていました。この読書感が大賞の理由かな?2010/09/21
inugamix
3
それなりに善良な青年が、奇怪なくせに妙に現実的な落としどころを押しつけてくる不条理な世界で、不運とかいろいろに翻弄されて苦労する「どうしてこうなった」物語。変な世界だからどんなに驚くようなことが起きても大丈夫とか思ってると、ばっちり代価を払わされて「ぇぇぇぇぇ」ってなった。うむ、カフカ。あとやっぱり茫洋としてない井伊直行を感じる。2010/01/12
misui
3
カフカの作品を大きくねちっこく書いたものだと思った。ものすごく上手いし面白いは面白いけど、観光地の路地を抜けたらごく普通の住宅街だった、というように妙にせせこましい印象。2009/08/18