出版社内容情報
★第133回芥川賞受賞作。
私は土の中で生まれた。親はいない。暴力だけがあった。ラジオでは戦争の情報が流れていた――。重厚で、新鮮な本格的文学と激賞された27歳、驚異の新人の受賞作。
内容説明
私は土の中で生まれた。親はいない。暴力だけがあった。ラジオでは戦争の情報が流れていた。第133回芥川賞受賞作。
著者等紹介
中村文則[ナカムラフミノリ]
1977年愛知県生まれ。福島大学行政社会学部卒業。2002年「銃」で、第34回新潮新人賞受賞、第128回芥川賞候補となる。2003年「遮光」で第129回芥川賞候補、2004年第26回野間文芸新人賞受賞。2005年「悪意の手記」で第18回三島賞候補となる。「土の中の子供」で第133回芥川賞受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ナイスネイチャ
218
図書館本。虐待されていた幼少期と現在の自分に自問自答しながら苦悩する主人公。生きるとは?自分の存在とは?と問いかけてくる作品。主人公に名前がないのも捨てたから?闇の部分が深すぎる・・。2015/11/18
kaizen@名古屋de朝活読書会
198
芥川賞】暗い。芥川賞らしいくどこまでも暗い。主人公が、それでもなお生きていることが一つの救い。主人公が小さいころヤマネさんが差し伸べた手を素直に受け止めた。今、白湯子が差し伸べる手を素直に受け止めるところに救いが。物語の価値を見い出せた。同梱の「蜘蛛の声」にも似たところが。2014/06/14
starbro
189
中村文則の未読の旧作7連続シリーズ第ニ弾は「土の中の子供」です。芥川賞受賞作だけあり、こちらも刺激的な作品です。やはり幼少期に凄まじい経験をした人間は大人になっても、心の闇を抱えてしまうのでしょうか?著者の人格形成も本作にかなり反映されているような気がします。2015/05/13
mmts(マミタス)
126
まさにタイトル通りですので、さすがに陰鬱な気分をいまだに引きずることになりました。その分、児童虐待を受けてしまった苦悩が伝わりました。生きていく苦痛を抱きながら、死んだように生きていたり、とにかく辛くなりました。しかし、それはそれで生きたいと思っている証拠ですし。生と死の対比、圧巻でした。「蜘蛛の声」もなかなか良かったです。主人公の妄想と現実の対比、こちらも読みごたえありました。図書館から借りたものなので、あらためて購入します。そして、じっくり世界観を味わいたいと思いました。陰鬱ですが良かったです。2016/08/29
れみ
121
とある壮絶な過去をもつ主人公が、その過去ゆえに幻覚幻聴に取り込まれたり自分を傷めつけたくなる衝動に突き動かされたりしてもがくお話。タイトルの意味が最後の方で分かると、あまりにも壮絶すぎて仕事したりして暮らせてるのが不思議なくらい。それだけに恋人的存在の白湯子や、昔お世話になったヤマネさんの心配をよそに絶望的な結末になってしまうんじゃないか…とも思ったけど希望の感じられるラストで少しホッとした。もう一編の「蜘蛛の声」は結局何が本当なのかな…と分からず気持ち悪いラストだけどそこがいいところなのかも。 2018/07/27