出版社内容情報
ぼくにできるのはお話をすることだけ。ラジオから届く、あの時代のヴォイス。JRAK、こちらパラオ放送局……。中島敦、大久保康雄らが接点をもった熱帯生物研究所。そこに流れるラジオ番組は「オールナイト・パラオ!」。謎のDJのトークが昭和史と文学史と奇想を巧みにリミックスし、ヒロヒトと南方熊楠、森鴎外ら戦前・戦中期の文化人たちとの密かな絆を謳いあげる。6年ぶりの大長篇小説。
内容説明
ラジオから届く、あの時代のヴォイス。謎のDJのトークが昭和史と文学史と奇想を巧みにリミックスし、ヒロヒトと南方熊楠、森〓外ら戦前・戦中期の文化人たちとの密かな絆を謳いあげる。6年ぶりの大長篇小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
踊る猫
36
実に鮮やかに(それこそヴァルター・ベンヤミンばりのナイスなDJとしての凄腕を見せつけつつ)高橋源一郎は虚実・夢現を巧みに混交させて唯一無二のハイブリッドをこれでもかと繰り出していく。どんな切り口の分析にも耐えうる懐の深さと確かなメッセージ性を備えた骨太な思索の結晶だが、ぼく自身はここまで自在に改変された歴史(ナウシカさえもが重要な登場人物としてミックスされる)がしかし「デタラメ」かつ「無責任」なナンセンスに堕していないところにこの著者の愚直な姿勢を見る。天皇という語りにくい題材を呑み込むポップの底力に唸る2024/04/13