出版社内容情報
絵画、彫刻、映画、写真、音楽、詩、古書店。「芸術新潮」で好評連載中のコラム7年分を集めた、約3年ぶりとなる待望の単著。
内容説明
ジャコメッティ、駒井哲郎、モンテーニュ、東山魁夷、シモーヌ・ヴェイユ、野上彌生子、ユルスナール、小村雪岱、ルクレール、ピカソ、倉俣史朗…。そのまなざしで触れ、慈しんだ作品と言葉をめぐるエッセイ集。活字で美を読む八十一篇の贈りもの。
目次
零度の愛について
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責任の所在
一度しかない反復
内的な組み合わせ
ミロと電話線
最後の恐竜
てのひらの石膏像
呪縛について
言葉の羽虫を放つ〔ほか〕
著者等紹介
堀江敏幸[ホリエトシユキ]
1964(昭和39)年、岐阜県生れ。1999(平成11)年『おぱらばん』で三島由紀夫賞、2001年「熊の敷石」で芥川賞、2003年「スタンス・ドッと」で川端康成文学賞、2004年同作収録の『雪沼とその周辺』で谷崎潤一郎賞、木山捷平文学賞、2006年『河岸忘日抄』、2010年『正弦曲線』で読売文学賞、2012年『なずな』で伊藤整文学賞、2016年『その姿の消し方』で野間文芸賞、ほか受賞多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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よこたん
44
“固有名詞には不思議な周回軌道がある。何年かに一度、呼びもしないのに向こうからあらわれて、忘れていないかを問いかけてくるのだ。” 記憶を呼び覚ますスイッチは、どういうきっかけで入るのだろう。気づいたときにはもう、ぐるぐると頭の中でその名が巡っていて、わからずじまいだ。堀江さんの、幅広く時に深く掘り下げられた記憶は、とこに仕舞われているのだろうといつも思う。ひんやりとサラサラ流れる水の如く心地よい文章が好きだ。が、かなしいかな読み手としての知識がついていかない。それでも新刊が出ると、わくわくとして手に取る。2021/11/20
踊る猫
21
呆れてしまいそうになった。堀江敏幸の書くものは、そんな粗忽な形の反応を私に喚起させるほどに相変わらず、変わることがない。文人たちの仕事に触れ、引用を施し、そして自分なりの意見を述べる。この繰り返し。だが、実は変わっていないのはこの私の方かもしれない。堀江のエッセイをもっと多角的に読む視座を持ちえず、ついつい「堀江といえば」と性急な結論に飛びついてしまう。『定形外郵便』というタイトルは謎だが、メールやLINEの全盛期においても郵便という手段を(だが、東浩紀的な「誤配」の概念とは無縁に?)選ぶ彼の美学を味わう2021/11/03
koji
20
2014~21年にかけ芸術新潮に連載した81編のエッセイ。著者は凝った表題に二重の意味を込めたようです。まず、著者に影響を与えた古今東西の作家達への手紙の形式を取ったこと。もう一つ、文学全集に糊付けされた付録のような「定形外の記憶」を起点として呼び覚まされた言葉の紡ぎを書いていること。例えば、加藤典洋の「少しだけ」、ジュリエット・グリコの「ムール貝」、河盛好蔵の「ココア」等。この記憶の紡ぎは、(とても著者程深くありませんが)私も大切にしているもの。いつか著者のように鋭角に切り込んだ思考に到達したいものです2021/12/12
しーふぉ
18
最近堀江さんのエッセイにハマっています。笑ってしまうような面白さはないですが、知的で巧みな文章を読むことが心地よい。2025/03/23
ソングライン
16
2014年から2021年に芸術新潮に発表された随筆集です。この間に開かれた絵画展、お亡くなりになった作家、文学者の思い出から作者の音楽、読書、スポーツに関する思い入れが、心地よいウンチクとともに語られています。所々に見え隠れする現在の強者の傲慢と悪徳に対する批判も見逃せません。2021/12/01