出版社内容情報
性の解放。性の革命。性的自立。性をめぐる自己決定権。そこにはいくつもの言葉があった――。フリーセックスとヒッピームーヴメントの空気が漂う70年代の京都から、好景気のなかで「自立」が謳歌された80年代の東京、#MeToo運動に世界が揺れる現在まで。離婚した母と暮らす少年だった「私」が50代の作家となったとき、自身の経験を娘にどう伝えようとするだろう? 「性」が人生にもたらすものを描きだす長篇小説。
内容説明
京都の喫茶「ロシナンテ」には、ジョニ・ミッチェルの歌が流れていた。「フリーセックス」がぎこちなく実践された70年代の京都から、好景気のなか「自立」が謳われた80年代の東京、そして#MeToo運動に世界が揺れる2020年代まで―。「性」が人生にもたらすものを歳月とともに描きだす長篇小説。
著者等紹介
黒川創[クロカワソウ]
1961年、京都市生まれ。同志社大学文学部卒業。99年、初の小説『若冲の目』刊行。2008年刊『かもめの日』で読売文学賞、13年刊『国境“完全版”』で伊藤整文学賞(評論部門)、14年刊『京都』で毎日出版文化賞、18年刊『鶴見俊輔伝』で大佛次郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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踊る猫
33
黒川創の書くものは『鶴見俊輔伝』から入ったので、資質として良かれ悪しかれ批評家的な体質がにじみ出たものであるだろうと予測はしていた。だが、ここまで「批評」的であることを恐れない小説であろうとは思わなかった。その筆致は小説的なストーリーの起承転結の旨味を損なってでも理に落ちる地の文の語り(ナレーション)を介した解説を施すことを恐れたりしない。だから正直「しんどい」本ではある。だがこの著者の誠実でかつ円熟した筆致は、ウーマンリブやMeTooムーブメントに揺れる世界の片隅で大事なことがらを語る確かな決意を見せる2023/11/08
hasegawa noboru
18
主人公「私」(=小説家、小暮ミツオ)は黒川創の分身だろう。いくつかの過去が交錯して「性」の体験が回想される。一五歳のとき、二八歳の他に恋人もいる女性と最初の性体験をもった。一九歳のころ、好き合った同級生の女の子が妊娠し中絶手術した。結婚したその相手との間にできた生活の軋みは修復できず二〇代後半で別れた。<この世界は、砂のように、そのような無数の若い男女も含んでできている。誰でも、いつかは若かった><そして、さらに年齢を重ねて、じょじょに老いていく>。二〇二二年のいま、「私」は六一歳のなろうとしている。2023/01/09
ホースケ
12
ちょっと意味深なタイトルに興味を惹かれたということもあるが、3冊ほど読んだ著者の作品が、どれも素晴らしかったので、迷わず手に取ってみた。『京都』とも内容が重なる部分があり、大らかだった昭和時代の空気感が伝わってくる。当時出会った女性との関係を現在の地点から「彼女のことを知っている」と回想するが、そこには男の身勝手さも見え隠れするように思えた。『シェルブールの雨傘』は私も好きな映画だが、女優カトリーヌ・ドヌーヴの生き様を通して、フランスにおけるかつての堕胎罪や性的暴力に対する声明に切り込んだ視点はよかった。2023/02/04
eipero25
7
小説なのかエッセイなのかノンフィクションなのか、あいまいでつかめなかった。 時系列もバラバラで戸惑ってしまった。こういう書き方をする人なんですか。カトリーヌドヌーブのmeetooに一石を投じた一件は知っていたが、この方が書くとなんだかわかりにくかった。要するに、とりとめなくて困った。2024/02/10
紀梨香
5
宇野亞紀良先生の装画に惹かれて手に取りました。60年代の京都の空気に触れることができました。2023/06/13