出版社内容情報
「あたしはまだ生きてるんだ!」いのち有限、果てなき旅路。カリフォルニアで男と暮らし、子ども育てて介護に行き来、父母を見送り夫を看取り、娘と離れて日本に帰国。今日は熊本、明日は早稲田、樹木花犬鳥猫を愛で、故郷の森や川べり歩き、学生たちと詩歌やジェンダーを語り合う。人生いろいろ、不可解不思議な日常を、漂泊しながら書き綴る。これから何が始まるのか――。
目次
うらしま
鰻と犬
耳の聞こえ
粗忽長屋
燕と猫
木下ヨージ園芸百科
荒野にモノレール
むねのたが
山のからだ
パピヨンと友
「ヨーコ・オノ!」
ひつじ・はるかな・かたち
著者等紹介
伊藤比呂美[イトウヒロミ]
1955年、東京都生まれ。78年、『草木の空』でデビュー。八〇年代の女性詩ブームをリードする。結婚・出産を経て97年に渡米した後、熊本に住む両親の遠距離介護を続けていた。99年、『ラニーニャ』で野間文芸新人賞、2006年、『河原荒草』で高見順賞、『とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起』で07年に萩原朔太郎賞、08年に紫式部文学賞を受賞。15年、早稲田大学坪内逍遙大賞、19年、種田山頭火賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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美登利
84
ああ、いいな。比呂美さんのエッセイを読む度に感じる。ちっとも似てるところはないはずなのにどことなく自分を代弁してくれてるような安心感。熊本に戻り、週半分は東京へ通い早稲田大学で教える日々。植物、飼い犬、アメリカの永住権、カリフォルニアの海、そして日本語を思う存分喋られる生活にも馴染み。エネルギッシュに生きる比呂美さんを見習いながら、私もまた頑張ろうと思える。2020/08/02
どんぐり
77
3日間は早稲田で「文学とジェンダー」の授業をし、4日間は熊本で犬と過ごす自称「老婆」の比呂美さん。ズンバズンバの時から齢を重ねて、熊本で親を看取り、アメリカで夫を看取り、日本に帰って来た。若い頃のテーマが性で、今は少し先にある死だという。「年を取って、髪が白くなり、目が見えにくくなり、膝が痛み、月経がなくなり、耳の聞こえが悪くなる」媼の道行きに、これまでの人生の来し方を愛おしむ姿が滲み出でくる。このエッセイには生につきものの老いと死が投影されて、「あれもなくし、これも落とし、どこかになにかを置き忘れて、そ2020/06/22
ゆのん
75
アメリカで夫を亡くし熊本へ戻る。お供は愛犬。大学での講師の仕事や、講演などの道すがら思い出すアメリカの荒野。方向も分からない山に入ったり、植物を育てたり、時には行きずりの人と燕の話をする。こう書くと素敵な暮らしの様に感じるが、大切な人や物を多く見送ってきた寂しさというか儚さというかそういうものも感じる。65歳のリアルが描かれたエッセイ。2021/03/11
ネギっ子gen
72
【国を離れて20数年、異国をさんざん流離して、わたしは国に帰ってきた】今はまったく浦島な著者の、最新エッセイ集。早稲田大学で教えるために、長年暮らした米国から“片道切符で、日本に帰ってきた”。リアクションペーパー(授業に対する学生の感想)に書かれた文言を気に病みながらも、若者たちのエネルギーを受け止めて著者は生き生きしているが、一方、年を取って耳の聞こえも悪くなる。<若い人は、たんに聞こえないと思っている。/それで声をおおきくするのだが、こっちには声を荒らげたようにしか聞き取れない>と。介護あるある話。⇒2020/05/26
kei302
42
表紙の装幀デザインが格好いい。表紙をめくると、熊本の散歩道と愛犬ホーボーとカラスの写真。味わい深いです。リアクションペーパーに心を痛め、10月1日を憂鬱に感じる伊藤さん。2020年度は休校中で今は熊本に。変則的に登場する月イチで出演のラジオ番組を楽しみにしているので、このままレギュラーになってほしいな。あのヨーコさんに似ていると言われるそうで、何となく分かる。それにしても、ヨーコさん、多すぎます。2020/06/23