内容説明
富小路禎子は旧華族に生まれ戦争を境に没落、さらに終戦を目前に最愛の母を病気で亡くす。失われたところからの出発は「幻のほうが濃く、現し身のほうが淡い」独特な歌の世界をつくった。不穏にして華やか、貴族院議員を失職した父に代わって旅館勤めをした若い日から七十代半ばの現在まで、精神の「乱」を求め激しく濃密な世界を詠み続ける当代一流の歌人の生涯。
目次
卵
父・家系
母・山国
会はざりし夫
引つめ髪の女
死・葬り
神から鬼へ
魂呼ばひ
白の呪力
死人花
桜
乱
著者等紹介
高橋順子[タカハシジュンコ]
1944年千葉県生まれ。東京大学仏文学科卒。出版社勤務を経て、法政大学日本文学科非常勤講師。「歴程」同人
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感想・レビュー
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しげ
48
手元に届くまで時間がかかった図書館リクエスト本、女優の鈴木京香さんがデビュー間も無い頃、不慣れな主演女優として日々葛藤していた時、共演の樹木希林から送られた短歌が「処女にて 身に深く持つ浄き卵 秋の日吾の心熱くす」富小路よしこの一句、旧華族出身の父を持ちながら終戦と共に一転、不遇な暮らしを強いられたと知りました。希林さんが鈴木さんに伝えたかったのは「女性としての誇りと覚悟」と言うところでしょうか…2025/06/28
星落秋風五丈原
6
1926年に東京・上落合にて歌道の家の末裔である旧華族・富小路家に生まれた。戦争を境に没落。父・子爵隆直の代で「枕草子」にもその名が出る旧家が終わる。さらに終戦を目前に最愛の母を病気で亡くす。失われたところからの出発は「幻のほうが濃く、現し身のほうが淡い」独特の濃密な世界をつくった。不穏にして華やか、好奇の目にさらされながら旅館勤めをした若き日から75才の現在まで精神の乱を求め続ける歌人の歌と生涯を描く評伝。歌の師・植松寿樹氏に師事。2001/11/12