内容説明
明治末期、東京からやって来た旅芸人が静かな越後の山村に嵐を巻き起こした。その男の肉体に隠された秘密、そして地主の若夫婦との間に芽生えた密やかな三角関係が、伝説の中から山妣の姿を浮かび上がらせる。明らかになっていく山妣の凄絶な過去。そして熊狩りの日、山神の叫ぶ声が響き、白雪を朱に染める惨劇の幕が開いた―。雪国の自然と習俗を背景に、情念と伝説が織りなす愛憎劇を濃密に描きホラー・伝奇小説の枠を破った比類なき千二百枚。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
202
1996年 第116回直木賞。 坂東真砂子が織り成す世界は ひどく濃厚で哀しい。 男と女の業のような情念が 全編に漂い、息もつかせない。 男女の交わりも剥き出しで 赤裸々だが、なぜか辛い気になる。 泉水に仕える涼之助の体に潜む 秘密。そして、越後の山村に 潜む怪奇伝説。健蔵の後妻てるの 妖しさも相まって、妖艶な物語が 紡がれる。間に挿入される涼之助 誕生の秘話も面白く、今に繋がる。 「ふたなり」とともに生きた涼之助と てるの25年に及ぶ因縁…圧巻で読みごたえのある本だった。 2014/05/01
icchiy
18
流石に直木賞を受賞するだけの熱量を持った作品でした。圧倒的で濃厚な匂いをもつ越後の山の中で繰り広げられる群像劇。自然の厳しさ、そこで生きる人間。人間といえど様々な生活レベルがあり、そこに憎しみやら生きていくバイタリティやら哀しさに包まれてしまい圧倒されてしまうほどだ。なんとなく突き放したところに作者がいる感触を感じるので不思議な読後感である。邂逅の森と読み比べるのが面白いかも。 2021/10/26
グラスホッパー
11
24年ぶりの再読。地主、小作人、遊女、狩人、それぞれの場所で生きる者の話である。妙の母が、「(山妣のように)このまま家を飛び出して山の中で暮らしたらおもっしゃいだろうて」と病床で話す場面が、当時の自分に遥かな思いを与えた。今、著者は亡くなり、自分は山妣のように、心自由に生きている。この作品は、今までたくさん本を読んできた中でも、忘れられない一冊である。2021/07/18
グラスホッパー
8
また、読んでしまった。「忘れること」執着をすてることが、現代社会でも通じる。2026/03/31
papakiti
8
新潟の雪国が舞台ということで、越後弁ともども興味深く読み進めることができました。琴と妙の姉妹がいじらしい。ラストは諦観・・・という感じでした。昔は生きることそのものが大変だったのですね。2018/03/10




