内容説明
少年は、ひとりぼっちだった。思ったことをなんでも話せる友だちが欲しかった。そんな友だちは夢の中の世界にしかいないことを知っていたから―きよしこに会いたかった。たいせつなことを言えなかったすべての人に捧げる、珠玉の少年小説。
著者等紹介
重松清[シゲマツキヨシ]
1963(昭和38)年、岡山県生まれ。出版社勤務を経て執筆活動に入る。99年、『ナイフ』で坪田譲治文学賞を、『エイジ』で山本周五郎賞を受賞。2001年、『ビタミンF』で第一二四回直木賞を受賞
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感想・レビュー
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chimako
99
本当に久しぶりの重松作品。2002年刊行。直木賞受賞後の作品ラッシュの頃。懐かしいようなほっとするような、重松さんの子どもの話は良いなぁ。主人公は吃音のきよし。きよしこはきよしの作り出した友だち。言いたいことはたくさんある。思うこともたくさんある。「そうだよ」も「ちがうよ」も「きよし」も苦手。自分の名前もうまく言えないのに父親の仕事で転校続き。自己紹介でつまずきうまくクラスに溶け込めないときもある。それでも野球と感想文で一目置かれ大人になっていく。同じ吃音の男の子にあてた物語は最後に泣かされて幕を閉じる。2020/01/15
あつひめ
47
子供の頃はきっとどうして自分がみんなと違っちゃったんだろう・・・っていっぱい悩み苦しみ・・・人と向き合いたくないと思ったと思う。それを煽るような転校の連続。子供って時にはものすご~く悪魔になる時がある。悪気が無いから土足で人の心にドカドカ入り込んでくる。でも、1年1年同じような事を繰り返しながら自分で対処法を見つけている。これが成長だと思う。世の中にはいろいろな障がいを抱えている人が居るのは事実。だけど、ちょっとでも心を近づけることができたら・・・とこの本を読んで感じました。2010/09/14
達ちゃん
32
重松さんらしい話で心温まりやさしい気持ちになりました。この少年が「青い鳥」のあの先生になるのかと思いましたが、それは考えすぎでしたね。どの話も良かったですが、「北風ピュー太」が泣けました。2016/02/15
Rin
32
【図書館】吃音に悩む少年「きよし」の物語り。転校が多く、新たな環境になるごとに悩みも出会いもある。吃音だから、話したいことも話せない。そして少しずつ言い回しを変えたり、言葉も少なく話すようになる。それでも昔出会った「きよしこ」のことは覚えてる。伝えたい言葉は自分の言葉でちゃんと伝えたい。伝わるんだって教えてもらえた本。きよしがこの本を真っ先に送りたかった「君」にも他のひとたちにも伝わるといいですね。とっても優しい本でした!2015/01/15
だんたろう
27
作者自身の少年時代を綴る構成になっている。吃音や度重なる転校などで、表現することがなくなっていくきよし。僕には吃音も転校もなかったけど、似たような感覚を抱いたところがたくさんあった。自分の小さい頃をのぞき見られたようで、恥ずかしいような、こそばゆいような。このシンクロ感覚が、たまらなく胸にくる。ゲルマは本当はいいやつなんだね、元気にしてるのかなあ。2010/03/30