出版社内容情報
沖縄戦で極秘編成された少年遊撃部隊の実像と、その設立に関わった陸軍中野学校が終戦時に画策していた「一億総特攻」の全貌を描く。
NHKスペシャル取材班[エヌエイチケイスペシャルシュザイハン]
内容説明
沖縄戦に埋もれていた衝撃の史実、日本“一億総特攻”計画の全貌。なぜ、本来守るべき子どもたちを、国は戦争に利用していったのか。そして、戦場で少年たちは何を見たのか。どのように傷つき、斃れたのか。生き残った者たちは、なぜ沈黙し続けなければならなかったのか。そしてその先にあったのは、子どもも含めた「国民総ゲリラ兵化」計画だった―。
目次
第1章 護郷隊と陸軍中野学校(沖縄戦の知られざる本質;護郷隊のルーツを追う ほか)
第2章 心を壊されて―第一護郷隊の記録(第一護郷隊の戦い;アメリカ軍が恐れた「GOKYO TAI」 ほか)
第3章 恩納岳の悲劇―第二護郷隊の記録(第二護郷隊で戦った少年たち;「心」を変えられた訓練 ほか)
第4章 もう一つの特殊工作―久米島での極秘作戦(沖縄の離島にも送られた中野工作員;離島工作の目的 ほか)
第5章 沖縄から本土へ―本土決戦の全貌を解く(もし、本土決戦が行われていたら;アメリカが考えていた「滅亡作戦」 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かおりんご
33
鉄血勤皇隊や学徒隊が結成されたことは知っていたけれど、ゲリラ部隊も組織されていたなんて!読んでいて、心がいたくなりました。仲間がなくなっても、なにも感じない。悲しみや恐怖心すら奪われてしまった子どもたち。13才から17才までの子が徴用されていたというのだから、驚きです。現在も世界の至るところで、子どもたちが兵士として育成されていると聞きます。彼らは洗脳されやすいし、人を殺すことをためらわないし、何よりも敵を騙せるという理由で。大人の都合に、子どもを巻き込んではいけないと思います。2017/01/15
Isamash
25
NHKスペシャル取材班(佐藤稔彦、板垣淑子、今理織ら)2016年発行著作。陸軍中野学校の士官が、少年兵(14歳〜)のゲリラ部隊を組織し教育し、実際に沖縄戦の戦闘に参加させたことを、粘り強い苦労の取材の末に明らかにしていて、感心させられた。士官は先生ということで赴任した例が紹介されている。改めて沖縄の住民のことを、本土防衛のための捨て石としか見ていないことが浮き彫りに。また少年兵だった方達が過酷すぎる体験(友人たちが死んでいくが、感情が麻痺)をヒトに話せずずっ自身で抱えていたことによる心的障害も浮き彫りに。2023/11/18
Happy Like a Honeybee
11
ISによる児童テロが国際的避難を浴びているが、第二次大戦中の沖縄でも同じように行われていた。生存者の貴重な証言を元に、書物は構成されている。残置工作員を巡る話。兵士でないので、軍事恩給は支給されず。愚かな為政者、国家により何もかも奪われた時代があった事を忘れてはならない。2016/12/16
犬養三千代
9
副題が「陸軍中野学校が作った沖縄秘密部隊」13歳から17歳までの少年が僅かな期間の訓練で、人を殺すことを何とも思わない、目の前で死んでいく仲間の少年を見ても心が動かなくなる。そういう状況に追い込んだ戦争。今の視点で70年以上も前の出来事を断罪するという姿勢には賛成できない。まるで高見の見物だから。しかし、語り継がないとダメだ。「中野は語らず」を少し押し開いたこの本は今の中高生によんで欲しいと思う。かつて、ゲリラ兵だった、心の傷を抱いたままでは辛すぎる。2020/10/03
パンダ女
8
戦争からかけ離れているようにみえる小さな間違いを、今の日本は積み重ねているようにしか思えない。「護郷隊」って意味的には「自衛隊」と同じで「自国をまもるため」って殺し合いを聞こえよく言って国民を納得させているだけだ。一億総特攻隊も実現寸前みたいだったようで、大人も子供もみんな死んでまで守りたいものって何って思った。戦争を経験したことない政治家が「戦争でしか取り返せないんじゃ」とか軽々しく言うんじゃないよと思う。 当時も今も、沖縄が本土を守るための捨て石となってしまっているということが分かった。2019/10/12