出版社内容情報
騙され苛まれ、そして諦める――そんな繰返しを自分に許してはいけない。騙されることこそ罪なのだ! 心に沁みる二つの中編小説。
内容説明
津波で失われたはずの手帳。行方不明のまま永い時を経た少年からの伝言。そこからは強いメッセージが発信されていた。騙されるということ自体が一つの悪なのだ。やられっ放しで判断力を失う前にやれることがある。僕たちはもう迷子のままではいられない。やけに心に沁みる、再生の歌ふたつ。
著者等紹介
天童荒太[テンドウアラタ]
1960年、愛媛県松山市生まれ。1986年『白の家族』で野性時代新人文学賞を受賞して文壇デビュー。1993年『孤独の歌声』で日本推理サスペンス大賞優秀作、1996年『家族狩り』で山本周五郎賞、2000年『永遠の仔』で日本推理作家協会賞、また2009年には『悼む人』で直木賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
278
天童 荒太は、ほとんどの作品を読んでいる作家です。 著者の二大テーマ、「児童虐待」と「東日本大震災」の短編2作でした。内容と表紙が合致しないような気がします。次は、短編ではなく骨太でヘビーな長編を読みたいと思います。 https://www.shinchosha.co.jp/book/395705/2020/06/07
いつでも母さん
217
150ページ程の中にタイトル作と『いまから帰ります』の2話。どちらも再生を謳っている。が意味が違う再生だった。重く余韻は半端ない。子どもを育てるという事は綺麗ごとばかりじゃないよね。夫婦が暮らし続けていく事も好いときばかりじゃない。家族を続けていく事は実は奇跡の連続なのだ。理不尽に喪った生は還らない。遺された者は痛みも苦しみも懐かしい優しさも・・みんなみんな抱えていくしかないのだ。それでもやっぱり「会いたい」よね。2020/06/09
fwhd8325
134
「迷子のままで」「いまから帰ります」の2編。どちらも深い。このところ、天童さんの作品が変わったのかなと思っていましたが、この2編は、天童さんらしい作品だと思いました。「迷子のままで」は、もっと読みたいという消化不良を感じますが、この余韻が心に残ります。タイトルも意味が深いです。「いまから帰ります」は3.11をテーマにした作品です。両作品とも閉塞感を強く感じます。そして、そこに社会の闇のような汚れを感じます。2020/09/08
のぶ
126
天童さんの本だから、こんなトーンの作品になるのではと思いながら読み始めたが、大体予想通りだった。本作には50ページ程度の表題作と、100ページ程度の「いまから帰ります」という2作が収められている。表題作は幼児虐待の話。「永遠の仔」以来テーマとしている内容。もう一作は原発事故の除染現場で働く人たちの話。こちらは「ムーンライト・ダイバー」に通じている話だと感じた。いつもの作品同様にテーマは重くて暗い。明るい気分では読めないけれど、最後は再生に向けた微かな光が見えて、重く暗いだけでは終わらない一冊でした。2020/06/11
とん大西
124
著者初読みです。あぁ、天童さんって、こういう作風なのですね。ややヘビーだろうと予想してた表題作「迷子のままで」…。わずか50頁の短編ながら侮れない生々しさが印象的でした。暎里の愚かさ、勇輔の蹉跌。理性、愛情の欠如と言ってしまえばそれまで。言葉でいうのは簡単だが、理性を保ち続けるのも愛情を注ぎ続けるのも、これはこれで難しい。懊悩に追い込まれてしまう人間の未熟さや愚昧さを突きつけられたような読後感。そして突き放されたような余韻。苦いですね、ラストも。でも今後も読みたい作家さんの1人となりました。2020/08/01