出版社内容情報
新任地川崎で、彼女の頬を濡らすのは涙の雫か、全てを洗い流す慈雨の雫か。モラハラ夫、我が子を見捨てる母親、身寄りのない記憶喪失の男……横浜家裁川崎中央支部にやってくる家事事件の当事者たちは多種多彩。社会から零れ落ちそうな人たちの心を開き、それぞれの人生に寄り添うため、赴任したばかりのかのんはひたむきに奔走する! 人間、そして家族の表と裏を心揺さぶる筆致で描く連作短篇集。
内容説明
ウソと誤魔化しの連鎖、調停室に響く怒号、やがてこぼれ出る「家庭の秘密」。モラハラ夫、我が子を見捨てる母親、身寄りのない記憶喪失の男…横浜家裁川崎中央支部にやってくる家事事件の当事者たちは、“モンスター”ばかり。だが、かのんはどんな時も解決の道を探ることを諦めない。社会から零れ落ちそうな人たちに寄り添うのが調査官だから―。
著者等紹介
乃南アサ[ノナミアサ]
1960年、東京生れ。早稲田大学中退後、広告代理店勤務などを経て、1988年に『幸福な朝食』で日本推理サスペンス大賞優秀作を受賞し、作家活動に入る。2016年に『水曜日の凱歌』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
305
乃南 アサは、新作をコンスタントに読んでいる作家です。 家裁調査官・庵原かのんシリーズ第二弾、連作短編集、感涙作でした。 オススメは、『再会』&『キツネ』&『はなむけ』です。 家庭裁判所には、色んなドラマがありそうなので、シリーズは続きそうです。 https://www.shinchosha.co.jp/book/371017/2023/09/19
修一朗
180
川崎に異動して少年事案から家事事件担当に配置替えになってからのシリーズ第二弾。家事事件担当も一つ一つの事案が重くてしんどい。管轄が川崎だけにいちいち場所が思い浮かんで共感してしまう。ゴリラの飼育員クリリンと職場の仲間がいてくれてほっとする。第6話「キツネ」のお父さんの決断にウルっときた。次回は長編を期待します。雫の街-つらい事情を抱えて社会から零れ落ちそうになっている人のいる街だ。2023/11/26
いつでも母さん
175
庵原かのんに会えた。長く続けて欲しいシリーズだ。川崎に移動となり、コロナ禍でも事件は多く忙しい日々。私生活の方も栗林と結婚して新しい生活が始まった(栗林の母親がこの先どうなる?)連作7話どのケースも興味深く読んだ。色んな人間が居るよね‥そんな中でかのんも成長していくのだろうな。ガンバレ!父と息子のこれからを応援したくなった6話目の『キツネ』と、切なかった最終話『はなむけ』が特に心に残る。2023/07/13
のぶ
162
「家裁調査官・庵原かのん」の続編。前作の舞台が北九州だったが、かのんが川崎に異動になりそこで繰り広げられる7つの事件簿。前作では恋人の栗林を東京に残して仕事をしていたが、入籍をして本人の家族問題は収まったようです。新しい赴任地で持ち込まれる調停はそれぞれに就籍、面会交流申立、遺産分割、離婚、子の監護、慰謝料、内縁関係調整。裁判所の書面なので硬いテーマが多いが、かのんはそれらに向き合って解決していく。問題のある家庭にはそれぞれの事情があるのがよく分かる。うまく調停したように見えるが、この先の事は見えない。2023/07/11
kotetsupatapata
143
星★★★★☆ 北九州から川崎へ異動し、少年事件から家庭内の紛争を調査する家事事件へと業務も変わったかのん。 離婚やら遺産相続やら体がいくつあっても足りませんな なるべくなら関わりたくない職業の方々ですが、色んな事情を抱えた当事者よりも、冷静に判断する第三者が必要なのでしょう。 今作で結婚したクリリンの支えもあって、真摯に当事者達の声を聴くかのんの姿勢は心の底から尊敬いたします。 閑話休題コロナ禍の時期を描いた作品でしたが、全く無意味な感染症対策(アクリル板・ソーシャルディスタンス等)は末代までの恥ですね 2024/08/03