出版社内容情報
なぜ先生は私に「すべてデタラメ」と告げ、殴りつけたのか?
伝説の知性・由良君美が東大駒場で開いたゼミに参加した著者は、その学問への情熱に魅了される。そして厚い信任を得、やがて連載の代筆をするまでになる。至福の師弟関係はしかし、やがて悲劇の色彩を帯び始める……。教育」という営み、そして「師弟」という人間関係の根源を十数年の時を経て検証する、恩師への思い溢れる評論。
内容説明
幸福だった師弟関係は、なぜ悲劇に終ったのか?伝説の知性・由良君美との出会いから別れまでを十数年の時を経て思索、検証する、恩師への思い溢れる長篇評論。
目次
プロローグ
第1章 メフィストフェレス
第2章 ファウスト
第3章 出自と残滓
第4章 ヨブ
間奏曲
第5章 ウェルギリウス
エピローグ
著者等紹介
四方田犬彦[ヨモタイヌヒコ]
1953年、西宮に生まれる。東京教育大学附属駒場中学、高校を経て、東京大学文学部で宗教学を、大学院で比較文学を学ぶ。現在は明治学院大学教授として映画史の教鞭をとりつつ、映画、文学、漫画、都市論といった領域で幅広い批評活動を続けている。『月島物語』(集英社文庫)で斎藤緑雨文学賞を、『映画史への招待』(岩波書店)でサントリー学芸賞を、『モロッコ流謫』(新潮社)で伊藤整文学賞を受けた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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調“本”薬局問悶堂
3
「教師だって人間だ」ということに早くから気付いていた気がする。「親だって人間だ」ということもかなり小さい時から分かっていたような気がする。 畏怖を感じ、その全てに魅了されるような師に、出会わなかったのか、それとも自分で遮断してきたのか。 「どうせ人間だから」と決めつけていたかもしれない。 それでも、この人に出会えてよかったと思える師もいないわけではなく、でもそれは著者が由良君美という人物に抱いているものとはなんだか大きく違う気がする。 《2020年6月 登録》2008/06/22
つまみ食い
2
「古き良き」大学の姿が偲ばれる。今ここに描かれている師弟関係や教育をそのままやることはできないだろうが、学ぶことはある(ローラ・マルヴェイとかロバート・ショーレスといった今は忘れつつある学者の文献情報なども含めて)2021/10/10
hakumo_kuren
2
由良君美の偉大さを記した本だと思って読み進めるうち、彼に対する著者の複雑な感情が見えてくる。 次第に、著者の師に対する深い後悔を消化しようという営みが本書であるとわかる。 客観を保てなくなったとき、真実が表出し、言葉が熱を帯びて光を放つ。2020/01/03
y_nagaura
2
「殺して忘れる社会」で引用されており、気になって手に取る。プロローグの扉の若き日の由良君美氏の眉目秀麗な写真が想像をかき立てる。由良君美という人物に魅了され、著者の羨望と、突然の罵倒に呆然とする心境に共感した。このような師弟関係を羨ましくもあり、煩わしそうだとも思う。山口昌男や木田元など、全く別の興味で知った人名が並んでいることから、日本思想の体系を知るきっかけになるかもしれないとも思えた。2017/04/02
mina
2
資料的な記述が多いけど、師の人生と自分を描いた秀逸な本だと思う。2008/08/05