内容説明
蜂の被害を報じた新聞記事等の蒐集、蜂について記述した古今東西の文献類の渉猟、果ては蜂被害者の取材に大分県まで出掛けて……。本書は、「蜂アカデミー」への報告に仮託して、それらの作業の結果を纏めた“蜂の博物誌”であります。
目次
1 この報告はどのようにして出来たか
2 いつ蜂が現われたか
3 ハエ叩き
4 アブラウンケンソワカ
5 ホース攻撃
6 夜なべ
7 ファーブル―「仮死」という凌辱
8 こうして1つの蜂の巣を全滅させた
9 救急車
10 戯歌三つ
11蒐集
12 文献学
13 取材
14 as busy as a bee
15 謎―日記失格者の弁明
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ・ラメーテ
38
読友様が読んでおられて興味を持って……。ある夏の日、主人公の作家の山荘にスズメバチが巣を作った。そこから始まる。スズメバチ vs 作家 の一夏の話。といっても、ただの小説ではなく、主人公の作家が「蜂アカデミー」という団体にレポートを提出するという形式で書かれている。井伏鱒二、三島由紀夫、メルヴィル、新聞記事、地元のハチキチの話、ファーブル昆虫記などの引用、実際にスズメバチの被害にあった人へのインタビューなど。妙な生真面目さが可笑しい。2016/12/21
三柴ゆよし
27
後藤明生の小説は小説を書くことについての小説である。そこでは目的と方法、そして結果が常に同居しているのだが、いつまで経っても物語の中心(そもそも物語というほどの物語すら生起していないのだが)にはたどり着かず、まわりくどい迂回を繰り返す。その迂回が後藤明生の文体そのものであり、中心がそこにない以上、文体こそが小説を支える唯一無二の骨子となる。これまで『挟み撃ち』『吉野太夫』『首塚の上のアドバルーン』『四十歳のオブローモフ』と読んできたが、本書は後藤明生に特異な文体の最も円熟した成果である、と私は考える。2013/11/20
おじいやん featuring おじいちゃん( ̄+ー ̄)
26
なんじゃこりゃう〜んう〜んう〜んやっぱりなんじゃこりゃ文学の世界は広いそして深いそんな世界の極北というべきか僻地というべきか…。本人は本人なりに本気でウケ狙いとか一切考えてなく書いてそうな所が怖い。岸部シローみたいな本でした。なんとなく2017/01/08
長谷川透
23
『白鯨』は鯨に脚を奪われ復讐を果たそうと狂気に駆られた男の物語であるが、この小説はスズメバチに刺された男が復讐を果たすべく蜂退治を思案し古今東西の蜂に関する資料をまとめ、蜂アカデミーなる学会へ蜂蘊蓄を次々と献上する物語である。『白鯨』は鯨に関るありとあらゆる文献を引用しているが、『蜂アカデミー』もまた、この方法を採用している。世界的名作の模倣を忠実に行うが故に、MobyDickと差異が顕著になり蜂の卑小さが際立つ。それも一つの個体を指す憎悪でないが為に狂気の色はこの作品の方が俄然強い。奇書ではあるが傑作。2013/11/25
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18
蜂の死/人間の死、蜂殺し/人殺し、小説/小説外の言葉、日記/日記外の言葉、規範/規範外、アカデミー/アカデミー外、金/銀、科学的/文学的……と、数えきれないほどの分割のなかを浮遊しては弾けるシャボン玉による撹乱の夢が、それでもなお、小説になっているわけは、その弾ける音こそが小説だからだろうか。2021/10/14
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