出版社内容情報
亡友の家で待っていたのは四季折々の草花と、ちょっと不思議な毎日でした。時は明治時代、文筆家・綿貫征四郎は、亡友の家の「家守」として暮らすことになった。待っていたのは白木蓮や都わすれ、萩、サザンカなど植物に満ちた庭。そして、サルスベリに懸想されたり、河童の衣を拾ったり、化狸を助けたりといった不思議な出来事が次々と起こり……。梨木香歩の傑作小説を近藤ようこが漫画化。
【目次】
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
chimako
73
良かった~ 楽しく嬉しくしんみりした一時をありがとうございました。これは手元に置いて好きなときに取り出して読みたい。綿貫も呟くけれど、ゴローって本当にいったい何者?優れもの過ぎて頭が下がります。人が人として、人ではない何者かが、人と何者かの子どもたちが自由に行き来できた世界は失われてしまったのか。長虫屋や何事にも動じないはなさんのような人。植物にも命が有り感情が宿る、その事を忘れそうになる日々に膝を正す思いです。近藤さんにはシリーズの続きも描いてほしいなぁ。待っています。2025/12/04
天の川
61
下巻は読み終わるのがもったいなくて、ゆっくりゆっくり読んだ。亡き高堂の家(多分、山科あたり)の家守として暮らす綿貫征四郎の日々の生活は相変わらず精霊たちとの共生で…。小鬼、むじな、カワウソに長虫屋。不思議な出来事をごく普通に受けとめる隣の奥方や和尚。精霊や神が往来する中、何も語らずしっぽを振る犬のゴローの何と心強いことか。梨木さんの小説の世界が具現化されつつ、近藤作品には余白がある。とても好き。2025/10/29
へくとぱすかる
56
つかのま近くて遠い時代に呼吸する。怪異が日常とすぐ隣り合わせであった「ほんの」百年前。汽車や疏水という近代のインフラも電灯もある家に住みながら、里山の自然から花を見て食材を拾う。駅に近く汽笛が聞こえる他は鳥の声、風のささやきを耳にする程の静かな家を、ひたすら雑文を書きながら守る生活。不思議さの波紋もいつしか日々の時間の中に積み重なり、いずれは綿貫の住んでいたことも、地層のように解読の難しい記憶となっていくのだろう。ここに再現された時の光跡を「懐かしみ」ながら訪ねてみたい。綿貫の見た疏水は今も流れている。2025/11/03
ぐうぐう
32
原作の『家守綺譚』は綿貫の著述という形式を取っているので、地の文には綿貫の視点による主観的な描写と綿貫の胸中(モノローグ)が混在している。コミカライズするにあたって近藤ようこは、その地の文を解体するのだ。つまり、描写とモノローグに。描写は四角いフキダシで、モノローグは二重線の丸いフキダシといった具合に描き分ける。これもまた、漫画ならではの効用を知ってのことだろう。「本当かしらって思ったりもしたんです けれど だって 本当みたいに思えませんでしょう」(つづく)2025/10/05
まさ
30
綺譚の後半、上巻と比べて動きが出てくる下巻では、これまで何度読んでも拙い想像では判然としなかった部分が近藤ようこさんの絵のお陰ですっきりとなった。「葡萄」の章の綿貫の意思、高堂とは異なる人生の岐路の場面も、すーっと染み入ってきた。漫画版もこれから何度も読むと思うけど、近藤さん、続きの『冬虫夏草』もお願いできないかなぁ。2025/10/20




