出版社内容情報
亡友の家で待っていたのは四季折々の草花と、ちょっと不思議な毎日でした。時は明治時代、文筆家・綿貫征四郎は、亡友の家の「家守」として暮らすことになった。待っていたのは白木蓮や都わすれ、萩、サザンカなど植物に満ちた庭。そして、サルスベリに懸想されたり、河童の衣を拾ったり、化狸を助けたりといった不思議な出来事が次々と起こり……。梨木香歩の傑作小説を近藤ようこが漫画化。
【目次】
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
80
梨木香歩の家守綺譚の漫画化。近藤ようこ画。近藤聡乃と勘違いして購入した。それでも良い。漫画は原作に忠実で、小説の独特な世界観と簡素なマンガの雰囲気がマッチしている。久しぶりに高堂の素っ気ない態度と和尚の人を食った物言いとゴローの賢しさを懐かしく堪能しました。下巻も楽しみ。冬虫夏草も漫画化されないかな。2025/12/21
chimako
66
大好きな大好きな『家守綺譚』の漫画。近藤さんの絵もこの世界観にぴったりで素晴らしい。小説で初めて『家守綺譚』を読んだときの事を思い出す。えもいわれぬ読後感で綿貫も高堂もゴローもおかみさんも好きになった。ゴローがやっと帰ってきたときの嬉しさも思い出した。その雰囲気を壊すことなく、温かい筆で登場人物を見られる幸せ。綿貫と高堂の間柄も、ゴローやおかみさんとの関わりも嫌みなく楽しめるのは近藤さんの絵によるところも大きいね。これは小説とともに自分の本棚に置きたい。下巻も楽しみです。2025/12/03
天の川
57
近藤ようこさんの絵が本当にピタリとはまる。彼岸と此岸をするりと抜ける不思議な空間がごく自然にそこにある…誰もがそれを受容しているのだ。梨木さんの小説もとても好きだけれど、近藤さんの作品としてもとても美しい。亡き友の家の家守となった綿貫の元に訪れる友の高堂や和尚(?)、河童…。可愛い犬のゴローもどこかに通じているようで。明治時代、万物に精霊が宿ることが当たり前として許容された最後の時代なのかもしれないと思った。2025/10/17
へくとぱすかる
45
原作を読んだのは5年前。改めて視覚化された作品を読むと、時代の雰囲気、今の世界からは失われた生活・自然の繊細さが直にわかる。空白を活かした画面や細い描画からは静けささえも感じる。疏水や毘沙門などの言葉、突堤のレンガのトンネルを歩いてぬける描写など、現代の風景を思い浮かべて綿貫のいた時代(明治とオビに書いているが、旧東海道が「駅の南側」になったのは大正の後半)を空想するのは楽しい。まだこの奇譚のような怪異(親友の高堂が出没すること自体もそうだ)が身近であったのが、良き時代とみるべきか否か。下巻も読みたい。2025/10/31
ぐうぐう
34
近藤ようこが『高丘親王航海記』をコミカライズした時、澁澤龍彦との相性の良さからの連想で、ひょっとしたら梨木香歩作品を、特に『家守綺譚』をコミカライズしたら面白くなるはず、との発想が湧いてきても良さそうだったのに、そのコラボの連想が本書を手に取るまでまったくできなかったのが悔しい。それほどに本作は素晴らしい出来なのだ。原作を踏襲した展開は、ややもすれば原作依存に見えてしまうが、近藤ようこは漫画であることの効用を充分に理解し、そして存分に発揮している。(つづく)2025/10/04




