出版社内容情報
誰かの力を借りなきゃ、笑えなかった――警報級の大型新人、満身創痍のデビュー作! 主人公の沙智は、難病の母を介護しながら高校に通う17歳。母の排泄介助をしていると言ったら、担任の先生におおげさなくらい同情された。「わたしは不幸自慢スカウターで言えば結構戦闘力高めなんだと思う」。そんな彼女を生かしたのは、くだらない奇跡だった。選考委員が大絶賛した「R-18文学賞」大賞受賞作。
内容説明
主人公の沙智は、難病の母を介護しながら高校に通う17歳。「わたしは不幸自慢スカウターで言えば結構戦闘力高めなんだと思う」そんな彼女に舞い降りたのは、くだらない奇跡だった。女による女のためのR‐18文学賞大賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
112
ここ数年にないキツい読書タイムでした。【女による女のためのR18文学賞】大賞受賞作とのコトですが、とにかく内容がえげつない。ヤングケアラーと毒親の話ですが、両親があまりにもひどすぎます。100ページちょっとのボリュームですが、読後感はヘトヘトになってしまいました。本作から何か1つでもいい印象、いい文章や表現をと思いましたが、残念ながら私には到底無理な話でした。でも、きっと実際にこういう家族は存在するんだろうなと。作者さんには大変申し訳ありませんが、終始胸糞が悪くなり続けるヤバいくらいハードな作品でした。2025/06/02
ナミのママ
88
主人公はヤングケアラーだ。難病の母を介護している17歳の高校生・沙智。父と母と3人で暮らすのは八畳一間、築50年の県営住宅。巻頭から赤裸々に書かれた生活は同情をかうのだが、家族の生活の中には笑いがある。それは家族の明るさなのか、書き手のうまさなのか。やがて高校を卒業し家を出ても、帰省すればまた始まる生活。しかし毒親とも受け取れるこの両親になぜか怒りがわかない。そうだよねと納得してしまうのだ。「泣き笑い」そんな言葉がピッタリの読後。 【第21回女による女のためのR-18文学賞】大賞2025/05/01
ネギっ子gen
73
【不幸自慢スカウターで言えば結構戦闘力高めなんだと思う】難病の母を介護する女子高生・沙智の日常を描いた3編の連作。“ヤングケアラー”を描いた作品で、3つのタイトル名が「救われてんじゃねえよ」「泣いてんじゃねえよ」「縋ってんじゃねえよ」とあるところに、“同情的な眼差し”を拒絶する傷ついた魂の疼きを感じさせる――。R-18文学賞大賞作。<なんでこんな小さなミラクルにちょっと救われた気になっているのか、自分でもわからない。現実はなにも変わっていない。でも、この笑いだけは、手放しちゃいけないとわかっていた>と。⇒2025/07/09
道楽モン
69
女のためのR-18文学から生まれたヤングケアラーの物語。当事者と部外者、その認識の差異が強烈だ。主人公の尋常ならざるポジティブ感は、読者には理解を超える。毒親とはいえ家族という存在が未成年にとっていかに絶対的なものなのか、理不尽さを感じながら読み進めているうちに、主人公は自立への道を歩んでいく。部外者からの他人事に対する自己愛的な正義感など、何の役にも立たないし、誰も救えはしない。所詮は綺麗事であるという部外者の無力感に収束してゆく。主人公の逞しさは、救いがたい人間の弱さをも過去のものとする術となる。2025/06/28
もぐもぐ
62
どんなに毒親であっても子供が親を見放すことはとても難しいことだと思い知らされた。難病の母を介護する高校生のヤングケアラー沙智。母は沙智に過剰に依存し続け、父は介護と家事を娘に押し付けて貧乏なのに散財。どん底なのに時折笑顔を見せる沙智の姿が辛い。重量級でしたが、最後に希望はあったし、地獄のような惨状とテレビに流れるお笑いのシーンを絶妙にリンクさせる著者の感性大好き。水元さきのさんの装画も好き。とてもいい作品でした。上村さんの本は次も必ず読む。2025/06/07