受け手のいない祈り

電子版価格
¥2,090
  • 電子版あり

受け手のいない祈り

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ A5判/ページ数 240p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784103557326
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

他人の命のため、自らの命を削る。過酷な救命の現場を描く、魂の衝撃作。感染症の拡大を背景に周囲の病院の救急態勢が崩壊する中、青年医師・公河が働く病院は「誰の命も見捨てない」を院是に患者を受け入れ続ける。長時間の連続勤務による極度の疲労で、死と狂気が常に隣り合わせの日々。我々の命だけは見捨てられるのか――芥川賞受賞の気鋭が医師としての経験を元に描いた、受賞後初の単行本。

内容説明

「誰の命も見捨てない」を院是に掲げる大阪近郊の総合病院の青年医師・公河は、別の病院の産科医だった医大時代の同期が過労死したことを知った。だが感傷に浸る間もなく、患者は次々に運び込まれる。感染症の拡大で医療体制が逼迫し、近隣の病院は夜間救急から撤退、公河たちの病院が最後の望みになった。徹夜での治療や手術が続き、70時間を超える連続勤務で公河たちの身体と精神は限界に。命を救った患者たちは日常に戻るが、自分たちはこの地獄から出られない―。医師の経験と驚異の想像力で話題作を次々と発表する作家が、命と魂の相克を描く。

著者等紹介

朝比奈秋[アサヒナアキ]
1981年京都府生まれ。医師として勤務しながら小説を執筆し、2021年、「塩の道」で第7回林芙美子文学賞を受賞しデビュー。2023年、『植物少女』で第36回三島由紀夫賞を受賞。同年、『あなたの燃える左手で』で第51回泉鏡花文学賞と第45回野間文芸新人賞を受賞。2024年、「サンショウウオの四十九日」で第171回芥川龍之介賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

シナモン

109
壮絶だった。読み進めるのが辛くなる。毎日ギリギリの綱渡りでなんとか保たれてる救急医療。そこに携わる医師たちのあまりにも過酷な現実。患者の命と医師の命。医師への尊敬の念を新たにする一冊だった。2025/04/16

ナミのママ

83
同期の女医が過労死したところから始まりブラックすぎる医師の日常が書かれている。近隣の病院が救急を受け入れなくなり、患者がどんどん回されてくる。同僚の医師は辞めていく。「誰の命も見捨てない」を看板にあげる病院は、働く医師の命には冷たい。底辺のブラック企業で働く人と違い、主人公は手に職があり転職も可能だが辞めない、自らを虐めるように心身共に疲弊していく。患者を背負っていたら自害もできないと語る同僚との会話。極限を超えた時に人の肉体は、精神はどうなるのか。ひたすら内に内に向かう文体に恐ろしさを感じて読み終えた。2025/04/09

がらくたどん

59
特定の職業や役割に「聖」を冠して呼ぶのって無邪気で善良な脅迫だよなとたまに思う。医者・教師、あと母とか。聖者になったら祈られる。祈られたら応えねば。生身の身体で応えきれないなら?医療崩壊した地域で唯一の救急受付病院を舞台にした腐りかけの内臓を捨てて意識だけの聖者になりたいのに果たせず狂いかける救急外科医の物語。病院創立者の「全ての命を救いたい」という祈り。患者の「救ってほしい」という祈り。現場医師の臓器から解放されて疲れることなくそれらの祈りの受け手でいたいという無茶な祈りだけが受け手を求めて虚空に惑う。2025/05/05

pohcho

58
周囲の病院が次々と救急から撤退する状況の中、地域で唯一となった救急外来で働く医師・公河が主人公。当直は二日に一度。二日も三日も寝ずに働き、残業時間は月三百時間超え。あまりにも過酷な労働環境で公河の心はやがて狂気を帯びていき、ほとんど夢遊病のようになりながらも手術をし続けるという現実はもはやホラー。生とは死とは、命とは何なのか。だんだんわからなくなってくるが、朝比奈さんなので一筋縄ではいかないというか、なんとも言い難い複雑な気持ちになりながら読了。ミイラ少年のエピソードはよかった。2025/04/22

きょん

46
医師である朝比奈さんの壮絶な医療の現場、フィクションであることを願うばかり。もし自分の子が医師で過労死したら、誰を恨みどこへ怒りをぶつければいいのだろう。人の命を助けるために自分の命を削るなんてことがあっていいわけない。2025/05/02

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/22486927
  • ご注意事項

最近チェックした商品