出版社内容情報
昭和恐慌、金輸出停止…金融危機に何度も立ち向かった財政家の不惑知命編。日銀総裁へ昇りつめ、華族にもなった是清。しかし、日本は中国侵攻に伴う軍事費の膨張から慢性的な財政赤字に陥る。是清は蔵相や首相を歴任して危機を切り抜けるも、最後は2・26事件の凶弾に斃れてしまう。金融史の専門家が、彼が断行した金融政策の功罪を精緻に再検証し、その財政家としての真価を問い直す画期的評伝!
内容説明
その金融政策は「リフレ」だったのか?財政家としての真価を問い直す画期的評伝!
目次
第3部 不惑篇(日銀総裁から大蔵大臣へ;欧州大戦;五大国;内閣総理大臣;関東大震災)
第4部 知命篇(昭和金融恐慌;金解禁;満州事変;金本位制停止;世界で孤立)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
103
高橋是清の生涯の下巻です。週刊エコノミストに連載されていたせいか、章立てが短く読みやすくなっています。ここでは金融恐慌が始まり陸軍の横暴が政局的に強くなって、2.26事件を引き起こすまでが書かれています。ここの状況は昔からいくつもの本で読んできているのでわかっているのですが、現在のように状況がすぐわかるということもなかったのである意味このような事件が起きたと思ってしまいます。是清の生涯ばかりではなく当時の経済状況がよくわかるような感じでした。2024/11/02
Sam
55
下巻は金融恐慌から始まり是清が凶刃に倒れる2.26事件までを描く。日本が軍国主義に転落していくこの時代はどうにも息苦しくて苦手。いままでなんとなく向き合うのを避けてきたが、そういう意味では本書を高橋是清の生涯を軸として読みつつもこの時代の金融政策や政党政治といった歴史の流れを実感を持って学ぶことができたのは収穫だった。世の流れに抗って金融のみならず政治の世界においても命懸けで取り組む是清の姿勢に胸を打たれる。現代に警鐘を鳴らす、いま読むべき一冊。2024/08/13
ジュンジュン
9
「人生というものはどうなるか全く見当がつかない妙なものだ。若い時からの事を振り返ってみて、変転極まりない人生を送った。しかし、自分は人の為、国の為に尽くすという気持ちだけは一貫して来たつもりだ」(212p)。まさに波乱万丈の生涯。下巻は最初の大蔵大臣から226で斃れるまで。長かった…(500p越え)。モラトリアム(要するに貸出延長)を発動してようやく読了。2024/06/09
とりもり
5
下巻は、金融恐慌から戦争へと日本が坂道を転がり落ちる過程に対し、大蔵大臣、首相として是清がどう抗ったかがメイン。日銀による財政ファイナンスの拠り所として是清の名前が登場することがあるが、日銀が引き受けた国債はほぼ市中に売却されていた事実を見れば、明らかにその中身は別物だということが分かる。そして、陸軍の暴走振りとそれを制止できなかったマスコミおよび国民が、あの悲惨な戦争を招いたことを改めて痛感する。右傾化する世界を見るにつけ、この時代の教訓から学ぶことはまだまだ多い気がした。大著だがオススメ。★★★★★2024/07/27
しゅー
5
★★★とても分かりやすい日本の近代史入門になっているのが嬉しい誤算だ。評伝としては分厚く、通史としてはコンパクトと言うバランスが幸いしたのかもしれない。「あの人やあの人が早世しなければ…」「ここで違う政策決定していれば…」などなど数々の歴史のIFへ改めて思いを馳せてしまう。コレキヨの本は贔屓の引き倒しか、その反動によるアラ探しに終止しがちだけど、本書の距離感は絶妙に心地よい。ヘンに持ち上げなくても、この人物の魅力は尽きないのだ。ヘンな言い方になるけど、これで安心して「高橋是清が好き」と言えるようになった。2024/06/14