出版社内容情報
数々の名作を世に送り出した小説家夫婦――その人生は、愛とドラマに満ちていた。「結婚したら小説が書けなくなる」。プロポーズをいなす津村を吉村は何度もかき口説いた。「書けなくなるかどうか、試しにしてみてはどうか」。そして始まった二人の人生は、予想外の行路を辿っていく。生活のための行商旅。茶碗が飛ぶ食卓。それでも妥協せず日々を積み重ねる二人に、やがて脚光が……。互いを信じ抜いた夫婦の物語。
内容説明
吉村、1927年東京生まれ(2006年没)。津村、1928年福井生まれ。文学を志して学習院大学文芸部で出会った二人は1953年に結婚、一男一女を儲ける。共に日本藝術院会員。文芸界きっての「おしどり夫婦」と評され、大成した両小説家が、同志としてライバルとして、ときに苦節を乗り越えてきた知られざる物語―。
目次
序章 「さい果て」への旅
第1章 結婚サギ
第2章 あまったれのおとうさん、妹みたいなおかあさん
第3章 同志にしてライバル
第4章 かけがえのない家族
第5章 夫の覚悟と妻の悔恨
終章 奇跡のような夫婦
著者等紹介
谷口桂子[タニグチケイコ]
作家、俳人。三重県四日市市生まれ。東京外国語大学外国語学部イタリア語学科卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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レモングラス
98
吉村昭さんの随筆は数冊本棚にあり、時折読み返すが、吉村さんを穏やかな優しい方だと思っていたので衝撃が大きかった。夫婦喧嘩はすさまじかったとのことで、ご長男の司さんが小学生の頃には「親父が手をあげて、おふくろを殴ることもあった。おふくろは気絶したこともあったんじゃないかと思います。親父がおふくろの下着をびりびりに破ることもありました‥」。吉村さんといえば旅先からの奥様への手紙にも賛辞を惜しまなかった人。吉村さんで、こうも我儘で癇癪持ちなら、頑固で理不尽なご年配の方とは距離をしっかり置こうと学びが大きかった。2024/01/08
fwhd8325
63
とても素晴らしいご夫婦であることは間違いありません。そしてお二人ともとても魅力にあふれた尊敬される小説家であると感じました。数々のエピソードは何度読んでも楽しく、心に元気を与えてくれます。中学生の時に初めて吉村さんの作品に触れたことを、とても感謝しています。2023/11/28
mondo
54
タイトル通り、吉村昭と津村節子の波瀾万丈のおしどり夫婦の物語。これまで吉村昭さんのエッセイも読んできたので、吉村昭さんの生い立ちや家族に対する思い、独自の流儀を時々思い出し、笑ったり、泣いたりしながら一気に読み終えました。谷口桂子さんの吉村昭さんと津村節子さんに対するあたたかい想いと、取材力の素晴らしさから、エッと驚くような思い出話も出てきて、おしどり夫婦の意外な横顔も知ることができます。また谷口桂子さんのユーモアセンスも見逃せません。この吉村昭と津村節子の波瀾万丈の物語、是非「朝ドラ」で観たいものです。2023/10/23
hiroshi
6
吉村昭が好きだ。しかし、ほとんど著作を読めていない。何だろうこの感覚。読みたい・読まなければのタイトルはぞろぞろ思い浮かぶのだけれど。希有な「作家同士」しかも「売れっ子」同士の夫婦像。「~文学漂流」は読んでいたのですんなり入り込めた。誰かも言っていたけど本書のタイトルが「?」な気も。もっとライバルで互いに認め合う「文士」同志のそれを彷彿とさせるような・・・・のが良いんじゃないかな。思い浮かばないけど。2024/01/20
オールド・ボリシェビク
5
タイトル通り、吉村昭と津村節子夫婦の足跡をたどった一冊である。夫婦の長男にも取材、吉村昭の家庭での姿など、これまで知られていなかった面にも触れられているのではないか。また、現在、95歳になる津村節子へも聞き取りしているのだが、津村の記憶力の確かさにも感心させられることしきりだ。「書くこと」に魅入られた夫婦の記録として貴重である。それにしても、治療を拒否し、自宅で逝った吉村昭の最期は痛切だなあ。2023/11/20