出版社内容情報
「日本は勝った!」戦後ブラジルで日本移民を二分し、多くの死者を出した「勝ち負け抗争」の真実。分断が進む現代に問う渾身の長編。
内容説明
無二の親友は、なぜ敵になったのか。沖縄生まれの勇は、ブラジルの日本人入植地「弥栄村」で日本移民二世のトキオと出会う。二人はかけがえのない友となるが、やがて祖国の終戦について真逆の報がもたらされ―。誰もが見たいものを見る世界で、何を信じ、何を守るべきか。史実に基づくエンターテイメント巨篇。
著者等紹介
葉真中顕[ハマナカアキ]
1976年東京都生まれ。2013年『ロスト・ケア』で日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞し、作家デビュー。2019年『凍てつく太陽』で大藪春彦賞および日本推理作家協会賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
369
葉真中 顕は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。ブラジル(ポルトガル語で灼熱の国の意味)における日本人移民間の勝ち負け抗争を描いた渾身の力作巨編でした。現在でも遠い(直行便がないため、1.5日)国ブラジル、当時は船で数週間かかる地の果てに必死の覚悟だったと思います。著者は本書で何か文学賞を受賞するのではないでしょうか?私は、本書でこの史実を初めて知りましたが、デマゴーグによる情報操作&狂信ほど怖いものはないかも知れません。 https://kangaeruhito.jp/article/1126202021/10/12
nobby
261
日本が無条件降伏を受諾して尚、地球のまさに裏側で二十万人の日本人移民どおしによる「勝ち負け抗争」という信じ難い戦争があったなんて…それも十年近くに渡ってとは…ブラジルには親日のイメージしかなかっただけにまた驚いた…敗戦という事実が正確に伝わらない…今では考えられぬ事態へと繋がったナショナリズムを嘆き、情報弱者への憂いに現在を重ねる…勝利を疑わない狂信派と敗戦に望みを繋ぐ敗希派、いつのまにか対極に位置した勇とトキオ。交互の視点で描かれる物語の一方で、呪術師の老婆の存在が読者の歯痒さを助長するのがたまらない…2021/11/26
モルク
223
沖縄生まれの勇、家族と大阪に出るが生活はままならない、そんな時叔父夫婦の息子となってブラジルに移住する。日本人入植地「弥栄村」に住みブラジル生まれの移民2世トキオと出会い無二の親友となるが…終戦、その時から移民の中で敗戦を認める派と日本の勝利を信じて疑わない派に二分され衝突する。都会で見識を高めたトキオと離れた村で日本人社会しか知らぬ勇、二人にも火の粉は注ぐ。デマが新たなデマを呼ぶ。私もまわりに流されたかも。ブラジルの日本人にこんな史実があった事を知らなかった。人物の繋がり、意外な黒幕、読み応えがあった。2022/02/24
いつでも母さん
214
凄い!今までも唸らされてきた葉真中作品だったが、これも凄い!圧巻でした。時代は大戦前後、ブラジル移民の苦難に敗戦の事実をめぐる真逆の『勝ち組負け組抗争』人は見たいものだけを見て、信じたいものだけを信じる。裏で糸を引いたのは誰?「錦衣帰国」の言葉が虚しい。祖国とはを考えさせられる。裏切りと友情・・どんどん体温が上がるのを感じながら、先が知りたくてページを捲る手は止まらない。是非!この灼熱をあなたも。お薦めです。2021/10/14
のぶ
210
圧巻の大作だった。舞台は戦前のブラジルの日本人入植地で始まる。主人公は沖縄生まれの勇と、ブラジルで生まれ育った日本移民二世のトキオ。他の入植者と助け合い、仲良く生活していた。やがて太平洋戦争が始まり、ブラジルにもその情報が入って来るようになる。やがて終戦を迎え、日本が戦争に勝ったと信じる人たちと、日本の負けを認めた人たちとの間で多くの死傷者を出す「勝ち負け抗争」が起こる。スケールの大きさや人物の描かれ方が素晴らしく、本から目を離すことができなかった。葉真中さんの本は何冊か読んでいるが、最高傑作だろう。2021/10/14