内容説明
ひとりの大人のいくつもの顔。思い過ごしに届かぬ憶い…お江戸のむかしに飛べばミステリーもラブロマンスもひと味ふた味、あと味も違うやはりニッポン、これぞ日本人!何だか嬉れしくて、少し誇らしい―舞台は三軒長屋から東へ西へ。相撲に富籤、浄瑠璃と賑々しく時代小説の名手たちが彩り豊かに綴る市井のスケッチ。「週刊新潮」好評連載。『読切時代小説』シリーズ完結編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
コージー
6
沢山の作家たちの沢山の時代物、時間かかりましたが、堪能しました。「流氷記」は壮絶でした。2015/04/12
山内正
4
茶釜がまだ人肌にもなっておらず だら七の浄瑠璃が終わった ばさばさと扇子を使いまだかと 由次郎が三つ下五十過ぎて肉の落ちただらし無い皴顔でだら七と名で呼ばれる この暑いのに茶を沸かすとはと 女が据わった 子供浄瑠璃はまだかえと聞いてきた まだ来てないのかい お前さん爺さんと呼ぶには気の毒だね えっお前も浄瑠璃語りだったのかぇ大阪で?茶汲みに見えない訳だ 土手道を何処かの大旦那が取巻き連れてすれ違う 中の一人がおや若旦那と由次郎に 声かけた 女が昔話に子供を連れに殺されてね 話を聞きにね 2022/07/06
山内正
3
チサは十に仮病で家にいた 菊次と約束し薄暗い部屋で抱かれて 口を吸われ身体を触られ快感が走る 五月に菊次は水哉口へ入った あの日の事は約束やったと 三年が過ぎ傘を被り刀を指した菊次 わし農兵隊に入ったと あの部屋で押し倒され口を吸われた 死んだと聞いたらよか男と一緒に 六月に銃弾にあたり戦死したと 隊は崩れ逃げ出したと聞く 一揆が起こり蔵が焼かれ騒動に 藩からの鎮圧がやって来て収まるが 村長が捕まり志津摩が許して村は助かった2021/09/28
山内正
3
筍を見に行って倒れたのは今頃 一年寝たままが、嫁の手を借り起き上がれる様に 村の作柄や孫のきくの行く末を日増しに思う 起きてたの?乱暴に障子を開けたきく 江戸から奉公に出た男が訪ねてたと お婆さんが提灯が足りないって バタバタと走り去る 宮祭りが今夜あり信者が集る 女中のみよは娘きくに誘われ抜け出した 後から市五郎がくると暗い道を走る 横から黒い影にぶち当たりきくは 一人境内の樹の下に 若い男に声掛けられ何処をどう逃げたか 翌朝下男が市五郎が殺されたと 弥助がみよを襲い市五郎に見つかり 殺したと 村役人が2021/07/02
山内正
2
竹藪へ行って倒れたのは今頃 一年布団の上に起きれるようになった 名主の仕事は息子に譲った 息子から村の様子を聞きその場の光景が浮かぶのが不思議だった まだやる事がと思える 庭から遠縁のみよが提灯が足りない と言いに来た 闇夜祭の準備に吊すのだと 行ってはいかんと言われたが 二人手を繋ぎ夜道を歩く 宮の森が見えた 藪から動くものが 手か離れ きくは一人雑踏を掻き分け市之助を呼んだ 朝嫁が市之助が殺されたと座敷に 久作戻り様子を話すが要領得ない 昼にきくが来た 何も無かったと言う 久作が村役人に捕まりした白状2020/09/18