出版社内容情報
僕と羊男はここから脱出できるのか? 図書館の地下に囚われる不条理を描く名作とカット・メンシックのダークなイラストが響きあう。
内容説明
図書館の地下のその奥深く、羊男と恐怖と美少女のはざまで、ぼくは新月の闇を待っていた。あの名短篇が、ドイツの気鋭画家によるミステリアスなイラストと響きあう。新感覚アートブック第三弾!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
279
何度か読んだことがある物語ですが、バージョンが異なる事もあり常に新鮮です。カット・メンシック挿絵のアート・ブックシリーズを三冊共読んでいますが、こういう本が出版されるのも世界の村上春樹だからでしょうね!早くノーベル賞を取って欲しいなぁ。2014/12/13
青乃108号
234
宿直明けでろくに寝ていない俺に丁度良い、意味不明な本だった。絶対、今夜夢に出てきそうな。村上春樹はもしかしたら図書館という存在を忌み嫌っているのかしら。俺のような図書館本だけ読みまくって、つまり私財を投じて著作を購入する事は皆無でしたがって作家の収入に貢献する事が全くない、そんな読者ばかりだったら作家の生活がなりたたぬ。なりたつのかも知れんが潤わぬ。図書館=怖いよ恐ろしいよ。図書館利用者を眠れぬ程の恐怖に陥れた結果、飛躍的に著作の売上を伸ばす春樹。などと妄想が止まらない程、今眠い。寝たら夢に出てきそうで…2021/09/20
hiro
228
村上ワールドを多元的に味わうアート・ブック第三弾ということで、『パン屋を襲う』に続けて読んでみた。短編小説は、読んで好きになった作品や、映像化され小説とともに映像で記憶した作品は、記憶に残るけれど、長編小説に比べると記憶に残りにくいと思う。『パン屋を襲う』はカット・メンシックのあのピエロの画といっしょに記憶に残っている。主人公のぼくが図書館の地下の牢屋に閉じ込められた恐怖のこの奇譚も、きっとメンシックが描いた羊男の画といっしょに記憶に残ると思う。未読のアート・ブック第一弾『ねむり』も読んでみようと思う。2015/02/14
きさらぎ
200
本が音という音をすべて吸い取ってしまう図書館の静けさが好きだ。本好きな人なら何日でもただ本を読んでいたいと思ったことがあるはずだ。たとえベッドと机と水洗トイレしかないような場所でも3食おやつ付きならそれでもいいと思う人さえいるかも。地下の読書室へ連れていかれ閉じ込められたぼくは、異空間において自分の存在について考える。「君は一体誰?」「私はわたし、それだけ」君が誰か、自分が誰かなんて気にしなくてもいいかな。ただ図書館に行っただけで、地下から抜け出せなくなることなんてどこの図書館でもあることなんだって。2017/05/11
kazi
196
佐々木まきバージョンと比べると、より大人向けのダークな作品に仕上がってますね。この作品も説明されない暗示的な表現が山盛りになっており、読者の想像力でどのようにも解釈できてしまいそうです。今回読むまで完全に読み落としていたが、「すごい階段ですねえ」「大昔は井戸だったんだよ」「でも水が枯れちゃって・・」なんてやり取りがあったんですね~。井戸と言えばねじまき鳥にも登場した村上作品の重要アイテム。枯れた井戸を降りてたどり着く地下室=深層心理の世界って事なのかしらん?う~む、どうだろ?あんまり自信ないかも。2020/07/19