出版社内容情報
「眠り」は、「ねむり」へ――。
眠れなくなってもう十七日――。ある日突然不眠に陥った主婦の不思議な世界を描いた村上春樹の名作『眠り』が、20年ぶりの全面的な改稿を経て登場! ドイツ語版の、濃紺と銀をふんだんに使った美しいイラストレーションや、著者自身による書下ろしの「あとがき」も収録、タイトルも『ねむり』に一新されました。
内容説明
覚醒する新世界。目覚めつづける女の不定形な日常を描いた短編『眠り』が、21年ぶりの“ヴァージョンアップ”を経ていま再生する―ドイツ語版イラストレーション、日本版のためのあとがきを収録した、村上世界の新しい「かたち」。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
352
エンディングも怖いが、夜に1人で覚醒し、死を考える時の表現にはもっと根源的なな生の恐怖が滲む。そして、夫の寝顔をみて醜いと思い、息子の寝顔に「血統的なかたくなさ」を見てしまう時の孤独感は、人間は所詮は1人なのだという本質的な事実に向き合わざるを得なくさせるのである。本書は短編「眠り」を長編化し、ドイツで出版された時の装丁と同じくカット・メンシックの挿画を付したものである。メンシックは必ずしも、もろ手をあげて好きというわけではないが、このような造本は今後も試みて欲しいものだと思う。2012/12/31
hiro
197
『パン屋』『図書館』『ねむり』の順番で、村上春樹の短編とカット・メンシックのイラストレーションという村上ワールドを多元的に味わうアート・ブックのシリーズをすべて読了した。大学生のときの一ヵ月ほどの不眠症のようなものとの違い、不眠になった原因、本当に一睡もしていないのか、夫は気づいていないのか等々、夢を見ているような不思議な話だった。そしてこのラストはどのように解釈したらいいのだろうか。短編なので一気に読むつもりだったが、この主婦に代わって少し睡魔に襲われてしまった。今夜表紙のイラストが夢に出てきそうだ。2015/02/28
きさらぎ
167
17日間眠れない。眠れない夜、眠らなくてはと焦れば焦るほど眠れなくなり、今晩もまた眠れないのではないかと夜を恐れる。不安が恐怖を招くのだ。「眠りなんかいらない。発狂してもいい。眠れなければ本を読むことにしよう」眠れない時間は誰にも邪魔されない私だけの時間だと思えたら楽になれるだろう。私が眠れないことに夫も息子も気付いていない。理解ある振りをしてそんなことにも気づかない夫。一緒に寝ていて気づかないなんて…現在不眠とは無縁、むしろ毎日睡魔と戦って連敗中の身としては2日続けて眠れないだけでも狂いそう(笑)2017/05/21
ハイク
160
村上春樹5冊目である。一読して面白い作品だ。「ねむり」について30歳を超えた主婦の17日間眠らない物語だ。物語と言うよりも「ねむり」について読者に問い掛けている。「ねむり」は「人が知らず知らずのうちに身につけてしまう自分の行動、思考パターンを作る傾向(偏り)を中和する」と言っている。すなわち自分をリセットする事だ。同時に読者は「ねむり」とは何かを考える。最後に描写した事も比喩的であると思うが、色々と解釈出来る。この本は著者の小説手法を理解する上でヒントになるであろう。20頁にわたる挿絵がありユニークである2014/11/18
kazi
157
主人公の女性が深夜に「アンナ・カレーニナ」を読みだすのは、不倫を暗示しているのだろうか?それは安直すぎる考察か・・?主人公の女性は専業主婦だが、家庭生活にも主婦業にも何の魅力も感じていない。『私は傾向的に消費され、そのかたよりを調整するために眠る。それが日々反復される。その反復の先にいったい何があるのだろう。多分何もない。』主人公が自身の人生の歩みに関して、後悔を抱いていたことは間違いないと思う。文学に対して情熱があったはずなのに、その夢を自身で断ち切ってしまった。かつて魅力的に見えていた旦那は、2020/07/20
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