出版社内容情報
13Cイタリア、奇蹟を起こす聖遺物の正体と消えた聖フランチェスコの遺体。気鋭の言語学者が描く『薔薇の名前』と並び立つ長篇小説
内容説明
聖フランチェスコの死から四半世紀が過ぎ、アッシジに大聖堂が完成しつつあった1252年、ローマ近郊の修道院に届いた謎の聖遺物が次々に奇蹟を起こした。調査を命じられた若き修道士ベネディクトが、村の助祭ピエトロとアッシジへ向かうと聖者の遺体が墓所から消えていた。奇蹟と大聖堂の謎、聖者と信仰に迫る歴史ミステリ。
著者等紹介
川添愛[カワゾエアイ]
九州大学文学部、同大学院ほかにて言語学を専攻し、博士号を取得。津田塾大学女性研究者支援センター特任准教授、国立情報学研究所社会共有知研究センター特任准教授などを経て、言語学や情報科学をテーマに著作活動を行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちょろこ
123
楽しい時間だった、一冊。次々に奇蹟を起こす身元不明の聖遺物。主人公の修道士がその聖遺物の正体を探るという歴史ミステリ。宗教と信仰、全く知識もない世界の不安感も何のその、瞬く間に謎めいた世界へといざなわれた。聖遺物の謎、聖堂内の構造、探索とページを捲るのが楽しい時間が持続する。これがこの物語の最大の魅力だと思う。そしてその時間を共にするベネディクトとピエトロ。この二人の深まる関係も読んでいて気持ちが良い。遺物を“かけら”と表現しているところも神秘的で心をくすぐられる。壮大な物語、面白かった。2020/01/07
trazom
118
アッシジの聖フランチェスコの遺体の在り処が、死後600年近くも不明だったという史実を下敷きにして創作された小説。言語学者としての川添愛先生の本の面白さは折り紙付きだが、小説家としても豊かな才能をお持ちだということを思い知る。聖遺物に対する特別視、教区教会の聖職者と托鉢修道会との対立、托鉢修道会を敵視するパリ大学、フランチェスコ会とドミニコ会の対立、異端審問、「司祭ヨハネの国」伝説など、中世キリスト教会を取り巻く状況が背景となっていてとても興味深く読めるが、ただ、ちょっと長すぎるかなあというのが正直な感想。2023/06/20
buchipanda3
108
聖フランチェスコの聖遺物の謎を追った中世歴史ミステリ。厳かな感じだが、中身は堅すぎず柔らかすぎず歴史もの活劇エンタメとしての醍醐味をしっかりと味わえた。主人公の二人はどちらもキャラが立っていて、彼らの真摯な思いと奮闘ぶりは読み手を惹き付け、その活躍に胸がスッとなった。こじらせ気味のベネディクトが大切なものを得て成長していく流れと謎解きのストーリー展開が巧みに絡まり、最後まで飽きさせない。もう一方のピエトロは賢さと行動力でワクワクさせる。仲間もいい感じ。歴史の影に光をあてた妙味ある物語を楽しめた。2019/11/15
榊原 香織
97
面白かった。 13世紀イタリア舞台のミステリ。 現代的な会話がノリが良く親しみが持てる。 アッシジの聖フランチェスコ死後十数年、盗まれた聖遺物と2つの修道会の争い。 ホームズ役は無頼な助司祭、ワトソン役は美貌の修道士。 作者は言語学の専門家。2021/01/23
南雲吾朗
67
「野球と政治と宗教の話は、喧嘩のネタになっちゃうから極力しないんだ。」20代の頃よく行った飲み屋のママさんがそう言っていた。だから、それらの関連の本を読むと、時々思い出す。「聖者のかけら」タイトルどおり聖遺物のお話。キリスト教という大きなくくりの中に、様々な考え方を持った宗派がある。人が集まると、違いが生じるのは当たり前だが…一つの大きなくくりの中なのに、なぜ協力し合ってやっていかないのだろうと、時々感じる。この物語を創作するのに、細かくキリスト教というものを調べたのだろうなぁっと感じられた。面白かった。2020/08/22