名残の花

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  • サイズ 46判/ページ数 285p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784103528319
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

幕臣・鳥居耀蔵が長い幽閉を終え帰ってきた江戸は東京へと激変していた――居場所を失った者たちの哀惜と意地を描く本格時代小説。

内容説明

天保の改革ののち、長年幽閉されていた鳥居胖庵が戻ると江戸はなくなっていた。軽薄な「東京」に憤然とする胖庵は困窮に喘ぐ見習い能役者と知り合う。立場も年齢も違う二人が心を通わせる中で遭遇する、やるせない市井の事件の数々。転変の世を生き抜く者の意地と哀歓を描く本格派時代小説。明治五年、東京。居場所をなくした二人が向かうべき道とは?

著者等紹介

澤田瞳子[サワダトウコ]
1977年、京都府生まれ。同志社大学文学部卒業、同大学院博士前期課程修了。奈良仏教史を専門に研究したのち、2010年に長編作品『孤鷹の天』でデビューし、同作で中山義秀文学賞を受賞。2013年『満つる月の如し 仏師・定朝』で新田次郎文学賞受賞。2016年『若冲』で親鸞賞を受賞(直木賞候補にも)。他の著書に『火定』(吉川英治文学新人賞および直木賞候補)『落花』(山本周五郎賞および直木賞候補)、いま最も勢いのある若手作家である(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

初美マリン

131
明治維新で東京になったとしても、江戸がなくなるわけではない。そのまま引き続いている。江戸に置き去りに去れた人と表現された人々。かつての妖怪鳥居、能役者見習いを軸にさまざまな古きこと新しきことの迷いを表した短編集実に味わいのある作品だった2021/01/15

修一郎

116
平安時代のお経梵唄のお話を読んだと思ったら今度は明治維新後の凋落著しい能楽のお話だ。澤田さんの古典芸能への造詣は幅広いね。鳥居胖庵御自身は南町奉行として江戸の享楽文化を抑圧した妖怪,御一新の混乱時には江戸払いを受けていて浦島太郎状態だ。この鳥居胖庵からの視点で御一新によって廃れようとする伝統芸能を守ろうするもの背を向けるものそれぞれの物語。今日でも我々が伝統芸能を鑑賞をできるのはまさにこの時代に守り切った人々がいたからこそなのだ。能楽の体系についても詳細でとてもよかった。2019/10/30

buchipanda3

109
明治が開けて間もない頃、古い時代のものは用なしの如く扱われてしまう風情。そんな中で、かつて幕臣として天保の妖怪(耀甲斐)と謂われた鳥居耀蔵翁と能楽を志す若者・豊太郎の二人が、時代の変遷に戸惑いながらも芯の通った心持ちを見せるのがとても印象深い時代小説だった。どの話も謎掛けがあり興味を惹く。それを能楽の名演目の謡を絡めて、時の移ろいがもたらす人の機微を見事に歌い上げる物語に仕上げられていた。「清経の妻」が特に好み。矍鑠たる二人の爺さん、耀蔵と平蔵の無遠慮な気っぷのいいやり取りもこの上なく痛快無比だったなあ。2019/12/13

のぶ

101
連作短編の形をとっているが、話は続いており、長編として読んでも特に違和感はない。主人公はかつて奉行だった鳥居胖庵。もう77歳の老人である。幕末に蘭学や歌舞音曲を弾圧して嫌われていた男。幽閉23年の末に彼が目にした江戸は東京と名を変え、明治の時代になっていた。武士のプライドをかざしても彼にはもう居場所がなかった。ある時、若い能役者と出会う。能楽もまた明治に没落の道を歩んでいた。そんな中で立場も年齢も違う二人が心を通わせるいくつものエピソードを描いた作品。時代に抗って生きる男の哀れが良く出た時代小説だった。2019/10/19

真理そら

83
鳥居耀蔵が明治になってやっと東京になった江戸に帰ってきてからの物語。『妖怪(平岩弓枝)』と同様鳥居を悪人として描いていない点や、『妖怪』以後の鳥居の日常を描いている点が興味深い。急激な体制の変化によって滅びそうになっている能についての記述も興味深く読めた。金春流の若い能楽師の生活を支えていくのが難しい状況でも芸を高めていきたいという思い等々共感できる面も多かった。2020/01/22

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