内容説明
北京から帰った少女は、広い庭に囲まれた西洋館に、大勢の親戚たちと同居した。永遠にぬけ出すことができないかのような思春期の孤独、良き話し相手であった叔父、劇作家の自殺、そして初恋…。芥川賞受賞作に続き、少女佐智を主人公に描く、ある青春の物語。
感想・レビュー
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内島菫
27
自伝のような小説。夜/闇あるいは（神）の場所に主人公が降りているときは「少女」という三人称を用い、昼/光あるいは他人とのかかわりあいのために彼女が浮上するときは「佐智」という三人称を使っている。但し、「第四章ぬば玉の」のみ、一人称の「私」になる代わりに、他の人々は「母親」「S」「J」のように記号のような代名詞であらわされる。それは作者の叔父である劇作家の加藤道夫の自殺にまつわる場面であるため、その方がかえって書きやすかったのではないかと推測する。2017/09/03
