内容説明
今なお正体不明の君主が隠然と勢力を保ち続けているという旧弊な城下街。再開発計画を任され街に赴いた46歳の設計技師が突如まきこまれた、余りに不条理な事態。伝統と近代、それは二つながらの桎梏なのか?この国に生きてあることの現在を果敢に問い直して、若々しい意欲と老練な野心に満ちた、書き下ろし長篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
秋芳
1
文体は硬いが内容は幻想的。とはいえ、ファンタジーではない。 眩暈を伴う幻視のような世界を作り上げている。 何が言いたいのか、この作品は何なのか。私には、いまひとつ良くわからなかった。 個人的に、辻井喬は「合わない」ようだ。堤清二名義の『消費社会批判』は読めたんだけど……。2007/06/23
まめちゃん
0
なんとも幻想的というか、ファンタスティックで、よくわからない小説でした。 物語の展開は理解できるものの、城と萱刈などの村との関係、現代の生活での ありえない展開、隣の部屋との境から覗く風景など、本当に何たがよく判らないまま 読み進めた感じです。それに難しいくて、読めない漢字がたくさん出てきました。2012/12/22
あんこ
0
ミステリーっぽかったのが意外2009/03/26
一日一文
0
辻井喬の小説の中でベスト3に入る小説。ミステリーロマン小説であり、カフカ的不条理小説であり、思想文学ともいえる。ラストシーンで、謎ときをしながら萱原で舞うくだりは、絵になる見事な表現だ。ここに谷崎の蘆刈をイメージしたのだろう。辻井が目標としていた伝統の創造力を自ら具現化した実験小説ともいえる。それにしても2007年刊行だから、辻井が80歳ころの作品。驚くべき思索の書だ。2021/11/22