出版社内容情報
婚家を捨てて、一躍、大正の劇壇を駆け上った伝説の女優・伊澤蘭奢の嵐の生涯! 「私、女優になるの。どうでも、決めているの」。松井須磨子の舞台に胸を貫かれ、二十七歳で津和野から夫と子を捨て出奔した女は、東京で女優・伊澤蘭奢へと変身した。「四十になったら死ぬの」とうそぶき、キャリア絶頂で言葉通りに世を去った女の劇的な人生を、徳川夢声ら三人の愛人と息子の目から描く、著者一世一代の野心作!
内容説明
舞台に立ちたい一心で子を捨て上京し、キャリアの絶頂で没した伝説の女優・伊沢蘭奢。野心を貫いた華の生涯を男達の眼から描き出す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
250
朝井 まかては、新作中心に読んでいる作家です。本書で伊澤蘭奢(いざわ らんじゃ)という大正~昭和初期の女優の存在を知りました。「四十になったら死ぬの」という言葉通りに、キャリア絶頂で早逝したからこそ、伝説になっているのかも知れません。 https://www.shinchosha.co.jp/book/339972/2020/06/06
いつでも母さん
201
【辛口御免】基本まかてさんの作品は好きなのです。「私、四十になったら死ぬの」帯のフレーズに誘われたのだが、どうやら今作は私には合わなかったようで・・ただ文字を追って読了した感じだった。伊澤蘭奢、明治から大正を妻として母として女優として生きた女性。3人の愛人と一人息子が語る彼女にそそられなかったのが残念。この男たちにもなんだかなぁ(汗)最後に食堂の親父さんがたった一度観た蘭奢の舞台『桜の園』を語る場面がいっそ響いた。2020/05/19
fwhd8325
123
断片的ですが、この時代や、人たちに関心を持ったことがあります。伊澤蘭奢の名前も伝説の女優という位置づけで聞いています。この大河ドラマのような物語は、主人公蘭奢と徳川夢声二人の存在感がとても大きく、それだけで、疲労感を覚える内容でした。終盤、杉村春子が登場してくると、まさに時代が変わる、その現場に立ち会ったようでした。2020/09/29
nico🐬波待ち中
119
「私、女優になるの。どうでも、決めているの」夫と一人息子を田舎に残し単身上京。誰もが無謀な夢だと呆れていたのに、思った通りにやり通す信念の女性。大正から昭和初期を駆け抜けた伝説の女優・伊澤蘭奢。3人の愛人と息子、4人の男達が彼女の人生を振り返り、彼女の死と向き合う物語。蘭奢に振り回された4人の男達は、互いに距離を保ちながら、蘭奢を中心にして周りを踊らされていただけなのかも。あの時代、田舎で生まれ育った既婚女性がこんなにも自由奔放に生きていけたなんて。周囲の目も気にせず自分の意思を貫く強さがとても眩しい。2020/08/20
のぶ
114
いつも時代小説で楽しませてくれている朝井まかてさんだが、今回の舞台は近代、と言っても大正から昭和の初期。テーマは演劇。当時の芝居や映画の事が多く扱われていてその変遷が良く分かる。俳優や弁士も多く出てくるが、話の中心は女優、伊澤蘭奢。自分は知らなかったが、松井須磨子の舞台が忘れられず、二十七歳で津和野から夫と子を捨て出奔した事実が描かれている。東京で成功し人気の女優になる。周辺に徳川夢声ら三人の愛人らの目から語られる物語。多くの女優が華やかさを盛り立てて興味深い。今までのまかてさんとは違ったが、面白かった。2020/05/15