内容説明
「ADHDと診断され、薬も処方されているのに良くならない」精神科医である著者のクリニックにはセカンドオピニオンを求める人が次々と訪れる。21歳の女子大生、64歳の退職男性、小学2年生の男の子―。実は、ADHDには診断の決め手となる特徴はない。だからこそ、症状に応じて発達の状態を調べる検査を組み合わせ、苦しさの原因を正確に特定する必要があるのだ。ところが、実際は問診と簡単なチェックシートへの記入のみで診断を下す誤診がまかりとおっている。精神科医の著者が診療実績と世界各国の研究報告を踏まえ、最先端の実情から対策と予防まで徹底解説。
目次
第1章 緩められる診断基準
第2章 「大人のADHD」は発達障害ではない?
第3章 矛盾だらけの「ADHD」
第4章 症状診断の危うさ
第5章 薬漬け治療の実態
第6章 覆った定説
第7章 見えてきた発症メカニズム
第8章 苦しみの真の原因は
第9章 回復と予防のために
著者等紹介
岡田尊司[オカダタカシ]
岡田クリニック院長、精神科医。1960年香川県に生まれる。東京大学文学部哲学科に学ぶも、象牙の塔にこもることに疑問を抱き、医学を志す。京都大学医学部で学んだ後、同大学院精神医学教室などで研究に従事しながら、京都医療少年院、京都府立洛南病院などに勤務。2013年に岡田クリニック(大阪府枚方市)を開院した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Die-Go
47
図書館本。ADHD/注意欠陥多動性障害は、脳内伝達性物質の未発達における機能的な先天的障害と思われているが、その多くを占めるのは実は愛着に課題がある、後天的なものではないかと言う視点を述べている。親の養育の問題と 簡単に言ってしまうのは危険性もあるが、親が共感的に接せられることによって子どもへの対応が変わり、またそれによって子どもの症状も落ち着いていくことがあるそうだ。これは愁眉を開くことにつながる。★★★★☆2022/04/02
かおりん
29
90年代半ばまでADHDは主に子どもの障害だと考えられていた。発達障害の名称が一般の人にも認知され成人が自ら受診し、処方も急拡大された。大人のADHDの多くは子どものそれとは違い発達障害とは異なる問題によって起きている。疑似ADHDを見分ける診断治療が重要。薬漬け治療の弊害、効果の不確かさ。発症は遺伝か環境要因からか。今は総合失調症より比較的軽症のうつや不安障害が急増している。愛着関係は母親だけに課せられてはたまらない。予防策は社会全体で考えていくべきだけど実践は厳しいものがある。2021/06/24
re;
21
発達障害は遺伝する?薬物治療が有効?この二点、特に専門的に調査されており、あぶり出された結果に納得。正直耳が痛いけれど、発達障害と診断される内の真性は二割。残り八割は遺伝とは関係なく、愛着障害等環境による偽発達障害である可能性が高い。それは何かと問われれば、親の不安定な愛情によって育てられた結果、不安定な人格に寄ってしまったという考察。あながち乱暴とは言い切れず、またその環境さえ整えることが出来れば、問題行動は著しく改善するというある種の希望がある。その場合必要なのは投薬ではなく、カウンセリングかも。2020/08/10
乱読家 護る会支持!
7
●大人のADHDの多くが、子どものそれとは別物で、発達障害とは異なる問題によって起きている。 ●ADHDと診断された人の処理速度や注意力を検査すると、平均を上回る人が三分の一程度存在する。 ●大人のADHDの人は、短期的にさえ、薬による改善効果が得られにくい。 ●ADHDは遺伝による病気である。しかし大人のADHDは、養育環境(愛着障害)や不幸な出来事を原因に起こる疑似ADHDと考えられるケースが多い。 ●そんな気がしていた疑似ADHD。その背後にある精神医療ビジネス。2020/05/19
貧家ピー
6
大人のADHDは、診断が難しく紛らわしい状態が たくさん存在ー「擬似ADHD」ーする。リスク遺伝子が見当たらない場合でも、環境がADHDの診断基準に該当する症状 を生み出すことあり、愛着障害による影響が多い事を指摘する。2022/12/22