出版社内容情報
誰からも理解されない。14歳のジュンは彼にしか聴こえない「音楽」が友達だった。トクと出会うまでは。いまだかつてない青春小説。
内容説明
学校では「アホジュン」と蔑まれ、友達はひとりもいない。でも、孤独じゃなかった。「音」があった。自転車があった。歌われることを待っている「歌」もあった。14歳。夏の少し前。同級生のトクが奏でるギターを聴いて、ジュンは、やっと気がつく。自分が楽器であることに。「僕、楽器なんだ!」小説の愉楽、ここにあり!!歓喜。興奮。ささやかだけれど奇跡的な物語。
著者等紹介
古谷田奈月[コヤタナツキ]
1981年、千葉県生まれ。2013年「今月の贈り物」(単行本刊行時に『星の民のクリスマス』と改題)で第25回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
☆よいこ
70
YA。音楽小説。周りの音や色や物事が、すべて音楽に聞こえる風変わりな少年ジュン。ジュンは音楽家だった▽[ジュンとアコースティックギターのための小曲]クライメイトのトクはギター少年だった。ギターの名前はエイプリル。[ジュンと声楽のための小曲]自転車の名前はジュライ[ジュンと吹奏楽のための小曲]イオタやばい[ジュンとハトのための静寂][ジュンとピアノのための小曲]声が出ないセプテン[ジュンとアコースティックギターのための小曲Ⅱ]スズメの音符は『エノー・エノー』▽授業中、机をなめる生徒は嫌いだけどジュンは許そう2020/09/08
巨峰
45
ずーっと、音が聴こえてきた。そんな小説!小タイトルがかっこいい2021/11/27
あじ
44
ジュンは自分を楽器だと思っている男の子。人から発せられる言葉の音とリズムの波長が、気持ちよく五線譜に乗らなければ共鳴できない性質を持つ。クラスで浮いてしまうジュンの良き理解者となるのが、トクとその父親。ジュンの弦を弾いて、音に心寄せる優しき演奏者だ。ジュンが持つ特殊な感覚を六楽章に渡り指揮したのは、これからが楽しみな新人作家である。三作目「リリース」を先に読んでいたが、本作とは全く毛色が異なる。果敢に創作に打ち込む姿が浮かび上がってきた。続く四作目「望むのは」が、先日刊行されたばかりだ。★3.2/5 2017/09/11
ナミのママ
41
音と同化し、じっとしていることが苦手で、のめりこんでは破壊してしまい、周囲から浮いてしまうジュン。これを障害ととるか個性ととるか。…自然の音を聴き、闇や大きな音を怖く感じるジュン、人間も動物であることを思い出しました。これから先、きっと生きづらいんだろうなと、現実的な目で見ながら、このピュアさを失わずに大人になってほしいとも思います。ものすごく引き込まれたわけではないのですが、不思議な読後感です。…本書は2作目、1作目は日本ファンタジーノベル大賞受賞とのこと。前作より次作を読んでみたいです。2015/01/03
そうたそ
28
★★★★★ 「自分が楽器」であるジュン。学校では周りにうまくついていけず、「アホジュン」と蔑まれ周囲から浮いてしまっている。そんな中、彼なりに音楽を通して様々な繋がりを得ていく青春ストーリー。ジュンには多少なりとも障害があるのかと思ってしまうが、作中では敢えてそこには触れられていない。あくまでジュンは音楽と共に生きる少年として描かれる。非常に独特なストーリーだが、その独特さが却って印象に残る内容だった。まさに作中に音楽が流れているようにも感じられた。いつまでもジュンはジュンのままでいてほしい。2015/01/26