出版社内容情報
果たし合い、藩命、真剣仕合、介錯。刀が決する生死の境目で、それぞれの生き様を貫く侍たち。山本周五郎を思わせる武家物短編集。
真剣仕合、藩命、果し合い、介錯。刀が決する人生の岐路を鮮烈に描く武家小説。小さな道場を開く浪人が、ふとしたことで介抱することになった行き倒れの痩せ侍。その侍が申し出た奇妙な頼み事と劇的な?末を描く「三筋界隈」。果し合いの姿のまま、なぜか独りで切腹した侍の謎を追う「約定」。武家としての生き方に縛られながらも、己れの居場所を?もうともがき続ける武士の姿を浮き彫りにする本格時代小説。
内容説明
小さな道場を開く浪人が、ふとしたことで介抱することになった行き倒れの痩せ侍。その侍が申し出た奇妙な頼み事と劇的な顛末を描く「三筋界隈」。果し合いの装束のまま、なぜか独りで腹を切った侍の謎を追う「約定」。他、武家としての生き方に縛られながらも、己れの居場所を掴もうともがき続ける武士の姿を浮き彫りにした本格時代小説。
著者等紹介
青山文平[アオヤマブンペイ]
1948年神奈川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。経済関係の出版社に18年勤務したのち、フリーライターとなる。2011年、『白樫の樹の下で』で第十八回松本清張賞を受賞し、作家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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雪風のねこ@(=´ω`=)
76
苦難を経て生きる覚悟を持つ筋が毎度ながら素晴らしい。春夏秋冬、季節ごとの描写も細やかで春山入りの草花が嬉しそうに咲くさまは、こちらもウキウキと楽しくなってしまう。表題作のラストはもやもや感があるものの、過去に拘りがあるものは時代に乗り遅れてしまうものだなと痛感した。2021/01/03
クリママ
50
表題作、そして、「半席」含む、6編の短編集。さっぱりした江戸の気風(と言っても出身は地方だが)、あるいは、武家の硬さが感じられる文章は好きだ。死へ繋がるものも多く、武家の矜持、厳しさ知り、胸が痛む。「乳房」では、敬愛していた養父の元を心ならずも離れて嫁がなければならなかった女性の心情が切ないが、事件の後にはいい夫婦になれるようにと願ってしまう温かい話で、印象深かった。2023/09/05
そうたそ
33
★★★☆☆ 青山さんの作品は何作か読んだけれど、やっぱり文体に慣れないなあ……。ただ前に読んだ二作は長編だったのに対してこれは短篇集。極々短い作品ながらも、すごく重厚感の感じられる良作が揃っていたように思える。説明的でなく淡白なようにも思えるが、実際のところ無駄な説明をしていない分、安易に読み逃すことが出来ない文章であることが特徴なように思えた。出来が良すぎて格調高いように思え、把握しきれなかったものもあった中、個人的に好みだったのは「三筋界隈」と「乳房」。特に後者は主人公が女性という意味でも異色の作。2015/01/20
yuzuriha satoshi
31
貧乏剣客が助けた浪人は自身の名刀と剣客の持つ刀との交換を申し出る 事が済んだら必ず仕合うことを約束して彼が出向いた先は…… 老いた釣り好きの当主が木場の丸太の上をいきなり走り出し、真冬の大川に落ちて死んだ本当の理由 友と斬り合う明日を避ける道はないのか、無骨な長刀が教えてくれたこと 刀にまつわる6編はどれも重いテーマを抱えている しかし読後は爽やかな風が吹き抜ける すっと話に入っていく出だしにも好感が持てます 他の作品も読んでみたい2014/11/06
とも
26
★★★★短篇が嫌いと言い続けている。が、ひさしぶりに覆してくれる1冊。それは登場人物のイメージも出来ぬまま、感情移入出来ぬまま終るのが残念なのである。まぁ、単に内容も薄っぺらいんどだけど。その中で、当作は名も無い江戸庶民や役人を題材に、どうでもいいような小さなことに目を向け、その時々で必死に生き活かせている。表題の『春山入り』、ハード版の表題『約定』、もう一遍『乳房』はどれも傑作。※『春山入り』に改題された文庫では、作家があとがきを書いているので、ハード版で読んだ方は立ち読みでもいいので、読んでみて!2018/05/20