レッドアローとスターハウス―もうひとつの戦後思想史

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  • サイズ A5判/ページ数 396p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784103328414
  • NDC分類 365.35
  • Cコード C0031

出版社内容情報

西武鉄道沿線の巨大団地にあらわれた、もうひとつの<戦後>――これまで誰にも語られなかった思想空間を鋭くあぶりだす、力作評論。

なぜ西武は東急に負けたのか? 勝敗を分けた“思想”の正体とは? 東京の西郊を疾走する特急電車(レッドアロー)と、“団地の時代”を象徴する星形住宅(スターハウス)。西武鉄道と団地が輝いたあの時代、あの空間に芽生えた“思想”に迫る。なぜ沿線に次々と巨大団地が建設されたのか。「反共主義者」の膝元で、革新政党の票が伸びたのはなぜか。対米中心の歴史認識に異を唱え、“もうひとつの戦後思想”をあぶりだす力作評論。

内容説明

西武と団地は、何を生み出したのか―特急電車と星形住宅が織り成した「思想空間」をあぶりだす力作評論。

目次

もうひとつの戦後思想史
88号棟を訪ねて
ひばりヶ丘前史
清瀬と「赤い病院」
野方と中野懇談会
堤康次郎と「西武天皇制」
社会主義と集合住宅
団地の出現―久米川・新所沢・ひばりが丘
ひばりが丘団地の時代
アカハタ祭り(赤旗まつり)〔ほか〕

著者等紹介

原武史[ハラタケシ]
明治学院大学教授。専門は日本政治思想史。1962年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本経済新聞社に入社。社会部記者として皇室などを担当。東京大学大学院博士課程中退。著書に『「民都」大阪対「帝都」東京』(サントリー学芸賞受賞)『大正天皇』(毎日出版文化賞受賞)『滝山コミューン一九七四』(講談社ノンフィクション賞受賞)『昭和天皇』(司馬遼太郎賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

おいしゃん

73
西武沿線を例にとり、沿線の住宅開発や、そこに住む人々の政治思想がどう展開されたのか、そして他の鉄道沿線とは何が異なるのかを、深く深く掘り下げた本書。大学の卒論で、鉄道会社と沿線都市開発を取り上げた自分にとっては、ゾクゾクするくらいマニアックで、じっくり楽しめた。街やコミュニティーはどう形成されるのか、政治思想や「団地」という切り口からでも、こうも考えられるのかと興味深く、特別な関心のない人にもぜひオススメしたい一冊。読み終えたいま、「団地めぐり」が趣味のひとつに加わった。2015/05/09

翔亀

35
戦後史においてなぜ「滝山コミューン」という徹底したコミューンが一時的にせよ成立したのか。東京の東部でなく西部、さらに中央線沿線でも東急沿線でもなく、西武沿線だけに形成された空間的な特質に源があったことを、多くの文献や証言、緻密な論証により積み上げていく。福永武彦の「草の花」の描く結核診療所に「清瀬コミューン」を探り当てたり、手塚治虫/宮崎駿から不破哲三(元共産党書記長)まで多士済々の住民を登場させたりして描かれる西武沿線思想史は、エッという驚きの連続でくらくらするほど。まさに「もうひとつの戦後思想史」だ。2014/07/08

さきん

29
西武の親分である堤康次郎の思惑とは裏腹に西武沿線の住人は共産主義やリベラルの一大拠点になっていた。均質の住環境が平等社会を体現し、高所得者層は東急沿線とすみ分けたたことが大きい。また現在に至っては、団地の老朽化が進み、世代交代も進まず、戸建て住宅へ転出し、外国人が多くなっているがそこの分析にも今後触れてほしい。構造主義の典型的な事例。2021/10/05

よこしま

26
本屋で講談社のPR誌『本』を貰い、氏の鉄道の旅を読むのが好きで。タイトルとジャケットを見て借りてしまったら、Love共産党すぎるかなと感じましたが、地理的政治思想が学べ参考になりました。西武創業者・堤康次郎は親米嫌ソだったにも関わらず、沿線に力を入れるのが下手。単に人を増やすだけしか考えず巨大団地ばかり作って、若い労働者家庭が共産党や社会党に傾くのは筋ですね。美濃部が都知事長期政権を保てたのも分かります。ただ団地族は転出、創価の追随があり、時代の流れもありますが。この団地自体がソ連が大元なのも皮肉ですね。2014/08/02

きいち

20
手塚ファンの自分には、なぜ阪急文化で育った手塚が東急沿線じゃなく西武沿線を選び住み続けたのかずっと謎だったのだが、少し近づけた気がする。確かにこの「一からみんなで感」は手塚のものだ。◇国や時代を主語に思想を語る研究はあるが、どうしても作り物に見えてしまう、でもこの本は「戦後の西武沿線」ががっちり一つの揺れながら考える主体として読める、すごい。◇手塚治虫の初期SF「来るべき世界」ではレッド公がウラン連邦=ソ連の代表、そしてスター国がアメリカ。このタイトル、そういうことか。やるなあ。2013/04/09

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