出版社内容情報
その夜四人は、人生の境界線上に立った。あの日のあなたと同じように。選んだのは、善? それとも悪? 著者会心の書下ろし長編。
内容説明
最高の出来事も、最悪の思い出も。生まれるのも、壊されるのも。人生の分かれ道は、たいてい夜に姿を見せる。ボクサー、タクシー運転手、警察官、高校教師。その夜、四人の男女は、闇に侵された―。人間の強さと弱さを繊細な視線で見つめ、生まれた、忘れられない物語。
著者等紹介
小野寺史宜[オノデラフミノリ]
1968年、千葉県生まれ。2006年「裏へ走り蹴り込め」で第86回オール讀物新人賞を受賞。2008年、第3回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞した『ROCKER』で単行本デビュー。『ひと』が2019年本屋大賞第2位にランクインし、ベストセラーに。他にも多くの著作がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ウッディ
248
犯罪の片棒を担がせられそうになったプロボクサー、料金を余分にもらってしまった女性タクシードライバー、反りの合わない上司のストレスで酒におぼれる警察官、夫からひどい仕打ちを受け、憧れの先輩に心が動く女性教師、そんな4人が交錯する一夜、善良な人たちの心に魔が差した時、彼らの 瞳に月は映っていない。小野寺さんらしくない、ダークな テイストの連作短編集でした。とは言え、独特のリズムある 文体でサクサク読めてしまう一冊でした。どんなに暗い夜にも、それに続く朝がやってくると思わせる、ラストに希望がありました。2021/03/27
fwhd8325
204
4つの4人の物語は、何だか後味の悪いものでした。それでも、この物語は必ずしもいいことばかりであるはずがない人生に現実感を持たせてくれます。これまで、人の善意が前面に感じられた小野寺さんの作品の中で、異色とも言えるのかもしれません。ラスト4人の今夜が語られるとき、月はどんな形をしていて、どんな色で輝いていたか、きっと、自分が見たかった月を思い浮かべるに違いないと思います。2021/04/14
kotetsupatapata
192
星★★★★☆ いつものほんわかした小野寺さんの作品と異なり、かなりダークな内容でした。 善悪のボーダーラインに立つ登場人物を、闇に乗じて悪魔が一線を越えさせようと手ぐすねひいて待っている。 まあ実際に一線を越えたのは警官の澄哉だけでしたけど、、 誰にでも起こりうることだけに、尚更後味の苦い読書になりそうでしたが、最後の章で各々に夜明けが訪れ、細やかだけどありふれた日常がやってくる。 裏表紙の三日月はそんな意味かな?と小生は感じました。 それにしても澄哉はクソだな💢 奈苗も別れた方がいいんじゃない? 2021/01/29
ムーミン
192
やっぱり読みやすい小野寺作品。ただ今回はいつもとは……、と思って読んでいましたが、最後にきてうるっときてしまいました。2021/01/15
Makoto Yamamoto
191
どの作品でも優しく人を視ている著者のチョット新しいアプローチ。 夜が影響するのだろうか、優しい人達にも魔がさすことがあるのだろう、ボクサー、タクジョ(女性タクシー運転手)、警官、先生たちが思いと違った方向へ。締めでは布石をシッカリまとめてくれた。 さすが、小野寺ワールド。 2021/08/26