出版社内容情報
叔父は文字だ。文字通り――。文章の自動生成装置を発明した叔父と、存在しない街の鮮明な記憶を持つ父。書くこと、読むことの根源を照らし出す双子の物語。
内容説明
文章の自動生成装置を発明し、突飛な素材で自在に文章を生み出す叔父と、その姪の物語「これはペンです」(芥川賞候補作)。存在しない街を克明に幻視し、現実・夢・記憶の世界を行き来する父と、その息子を描く「良い夜を持っている」。書くこと、読むことの根源を照らし出し、言葉と人々を包み込む2つの物語。
著者等紹介
円城塔[エンジョウトウ]
1972年北海道生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。2007年「オブ・ザ・ベースボール」で文學界新人賞受賞。2010年『烏有此譚』で野間文芸新人賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
榊原 香織
111
言語生成や記憶に関する中編小説2編。 ん、わけわからない。自閉症的プログラミング言語風小説、というか(感想も分けわからない風)2025/02/11
とら
99
とある叔父と父の性質について描かれた二篇の物語―と言うか過去の出来事。事後。表題作は芥川賞候補になって落ちたらしいが、まあ個人的には妥当だなあと思った。それは内容が理解出来かねるとか言う訳では無くて、単純に、ジャンルが違うと思ったからだ。SFだろうこれはどう考えても…と。それは自分の読み込みが甘かったからなのかもしれないが、理解の範囲内では、少なくともそう思うのだ。そしてそう考えて読んでみれば、こんなにユーモアに溢れて面白い小説は無いと感じた。素直に面白かったと思えたので、もうSFで良いんじゃないと思う。2014/02/19
kishikan
65
う〜ん、10代の頃にこの本に出会っていたらなぁ。集中して文章を読む熱意が持続しないんだよなぁ。芥川賞(「これはペンです」は候補だけど)って、どうしてこのような難解な文章のものだけが選考されるのかしら?さて、それはともかく、叔父と姪の話を綴った「これはペンです」、父と子の話である「良い夜を待っている」の2話のこの本は、読みづらさを別にすれば、いずれも興味深い話ではありますね。ただ円城さんの本にしちゃ読みやすい方かもしれないが、通勤電車の中で細切れに読む本じゃないね。表紙のオブジェのようなものも気になるなぁ。2012/01/07
kana
54
「言葉」や「認識」や「記憶」などといった形而上的なことをずっと考えている私と叔父さんとそれから叔父さんのお父さん。決して読みやすくはないのですが、各人の思考の渦に一緒にのみこまれていくことが、たまらなく魅力的で、ゆっくりながら、頁をめくり続けました。「これはペンです」の磁石炒め(鉄板にはり付いたままならぬ磁石たち)、「良い夜を持っている」で街を創り続ける記憶障害など、ユニークなモチーフにくすりくすりと笑ってしまうことも。楽しき読書体験でした。2011/12/11
がたやぴん
37
円城さんに初トライ。個人的には好きな本。序盤、文章が妙に読みづらい。何度か読んでる行を戻った。終盤、一転して読みやすくなった。それは、謎の一端を知った気分的ものなのか、意図して構築された書き方なのかは、今回読んだだけでは不明。近々、再読したい。今回は、姪の目線に支配された。故に、読後に高揚感が得られた。叔父、教授、母の目線でも読みたいと思えた。近年の芥川賞受賞者の中では、群を抜いて引き込まれる作家さんだと思う。次は受賞作[道化の蝶]を読みたい。2014/01/21