出版社内容情報
焦点の定まらない女の目の前で、裁判は強行された――。統合失調症に罹患した殺人者が辿った無期懲役への道程。垣間見えた、心に住まう漆黒の闇とは?
内容説明
刑法39条1項「心神喪失者の行為は、罰しない」―なのになぜ、彼女は裁かれたのか?園児の小さな身体を二十数箇所も刺し続けた「中国人妻」。統合失調症に罹患し、通常ならば不起訴処分となるはずだった。しかし―。面会と書簡を重ね垣間見えた、女の心を蝕む漆黒の闇。加速度的に悪化していく症状の中で、彼女が辿った無期懲役への道程を追う。戦慄の事件ノンフィクション。
目次
第1章 湖国の惨劇
第2章 歪んでいく風景
第3章 罪と病
第4章 割れた生き方
第5章 夢の果て
著者等紹介
平井美帆[ヒライミホ]
1971年、大阪府吹田市生まれ。1993年、南カリフォルニア大学舞台芸術学部卒業。アメリカ在住の頃から現地の情報誌に執筆する傍ら、日本の雑誌に海外ルポを寄稿。2002年帰国(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Maiラピ
30
とにかく『救い』がない。日本人が支払う中国人のお嫁さんの仲介料が500万とは、びっくり。あとがきで『書かれない事件』のことを知る。被害者が非もない子どもだったり、加害者が精神的な病気に罹患してる場合。しかし加害者の背景が即席のお見合いツアーで嫁いだ中国人妻であったことや100人に一人が罹患する統合失調症を患っていた事実がこの事件の一因になったことは 否めない。こういう危険ファクターをタブーだと埋もれさえることなく事実は事実として白日の下に曝す必要性を感じた。ただただ加害者の姉の人生がやるせない。2011/10/11
鈴
18
読むまではこのような事件があったことを忘れていた。これを読んで何より衝撃的だったのは、犯人の娘(幼稚園児)の目の前での犯行であり、娘はその一部始終を警察で事情聴取されてること。幼い目に、自分の母親が友達を何十回も刺すところはどのように映ったのだろうか。今この子はどんな少女になっているのか想像もつかない。そして裁判中の被告の態度が、とにかく驚きで。遺族の怒りを煽るだけだっただろうと思う。2014/08/09
gtn
15
中国朝鮮族として生まれた永善は、他の中国人よりエリート意識が高く、得意な語学を活かしながら都会暮らしをしようと日本へ移住。しかし、現実は、年上男性との田舎暮らし。孤独を募らせる毎日だが、夫も変人で話し相手にもならない。ついに心の病を発症。しかし、服薬すると動かなくなるからと、妻に投薬させず働かせる夫。遂に、あの夢の中の事件に至る。破滅へのレールを一直線に駆け抜けた感じ。拘置所内の彼女に著者が面会する。無期懲役の意味もあまり理解していない様子。彼女は、ブレーキをかける術もなく、今もレール上を走る。2020/04/18
しげ
10
「試練はそれを乗り越えられる人のためにある。苦労は人を成長させる。巷に溢れる言い草は、お飾りの精神論にすぎない。嘘だ。贅沢な嘘」という言葉の中の「贅沢な嘘」という表現にハッとしました。わたしは幸運にも贅沢な嘘の世界に生きていた。2016/04/07
いっちゃん
10
知らない人についていってはダメと教えてきた親たちの、背筋が凍ったこの事件。友達のお母さんで、園が決めた送迎当番。逃げられない狭い空間の中で、どんなに恐かっただろうと思う。ママ友とうまくいかない、それ以前に、中国から来て一人ぼっちの彼女を支えなかった旦那さんが一番悪いと思う。捕まったあとも、すぐに離婚、一度も面会にもいってない。無責任に外国から集団見合いで結婚し、愛さないなんて許せない。彼女をかばう気持ちは全くないけど、日本は、精神を病んでる人が多すぎる。もう安心して住めるところではなくなってしまった2014/09/06